別冊なかむらりょうこ
別冊なかむらりょうこ

 みなさんこんにちは、少女漫画も少年漫画も青年漫画もweb漫画もごはん漫画も4コマ漫画もギャグ漫画もレディコミもコマ割りされてるもの全部大好き!ワタナベエンターテインメント所属の少女漫画芸人・別冊なかむらりょうこです。

 3000作もの少女漫画を愛読してきた私が、最新のオススメ少女漫画を紹介するこのコラム。第1回は時代を反映させた恋愛を描かせたら右に出るものはいない! 東村アキコ先生の最新作です。その作品はなんと!

「タラレバ言ってたら時代が変わってしまった」

 ギリ昭和生まれの実家暮らしのフリーター、廣田令菜30歳が令和の訪れとともに“夢見つけ”を始める『東京タラレバ娘』シーズン2です!

■未婚女性を重くて尖った刃物で斬り続けた前シリーズ

『東京タラレバ娘』とは、2014年から講談社『Kiss』にて連載され、2017年にはテレビドラマ化。全9巻、累計500万部を売り上げた大ヒット作品です。主人公の倫子、小雪、香は、ともに33歳。仕事は一応あるが、恋愛は全く上手くいかず、「タラレバばかり言ってたらこんな歳になってしまった」と焦りながらも「女子会」を繰り返す日々。

「キレイになったらもっといい男が現れる!」「好きになれればケッコンできる!」そんな話ばかりしていると、突然、金髪イケメン男子に「このタラレバ女!」と言い放たれてしまい……。

『東京タラレバ娘』の連載当時、「ねえ、『タラレバ』読んでる……?」が、未婚の女性たちの合言葉になっていました。どこか余裕ぶって高みの見物をしていたけど、いざ自分の番が来たときはそんな場合じゃなくなっているという主人公たちの状況に、「え? これ私のことじゃない? これ私だわ……」と、阿鼻叫喚。

 苦しすぎるほどの共感に、ページを閉じたくなるけれど、今読まなければ私は本当にダメになってしまうと、鞭を打って読み進める。みんなも読んだら分かるであろう……と、他の未婚女性の肩を叩き「ねえ、『タラレバ』読んでる……?」を繰り返す。

 傷つきながらも、前に歩き出すことの勇気を教えてくれた『東京タラレバ娘』。

 その『タラレバ娘』の新シリーズは、パワフルな倫子たちとは打って変わって「無気力系女子」が主人公なんです!

■新シリーズのテーマは「夢見つけ」

 夢も人生の目標もないし、彼氏も好きな人もいないけど、Netflixもあるし、実家住んでて楽だし、コンビニのスイーツも美味しいし……。主人公の廣田令菜(30)は、日々をなんとなく過ごしていた。

 そんな中、新しく司書のバイトを始めた図書館で知り合った森田昭子(40)に、イケメンの男の子たちが働くコンセプトバーへ連れられて行く。個性的な面々が働くバーだが、そのバーのオーナーは初めてのお客さんに必ず同じ質問をする。

 それは、「あなたの夢はなんですか?」

 ……令菜の中でなんだかすごく引っかかる「夢」の一文字。人生いつの間にやら、なんとなく生きていた令菜がこの令和の時代から、「夢見つけ」に一歩ずつ歩み出していく……!

 今回の『東京タラレバ娘シーズン2』は、恋愛や結婚について“タラレバ”言っていた3人から、人生について“タラレバ”言っていた女の子の話へと、よりテーマが深くなりました。

 突然「あなたの夢はなんですか?」なんてイケメンオーナーに聞かれたら、心踊る人も、面を食らう人も、何も答えられない自分にショックを受ける人もいることでしょう。「夢」の言葉にはそんな破壊力がありますね。

 小学生のときは、あんなにも「夢」について質問が飛び交っていたのに、大人になったら過去の遺産かのように扱われてしまう「夢」。

 作中でも、「この国って夢って言われるとほぼなりたい職業って捉えちゃう」なんて描かれています。

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