■「レリクス」の魂を継いだ「めぞん一刻」

 ドラクエでは、スタート直後も、王様がどこに行って何をしてくださいと事細かに教えてくれますが、当時はそうでないのが当たりまえでした。

 レトロゲームにおける評価基準のひとつである“何をしていいか分からない度”では、「ながいたびがはじまる」とだけ言われて、そのほかいっさい教えてくれない『元祖西遊記スーパーモンキー大冒険』(1986年・バップ)がダントツ高いことで有名ですが、めぞん一刻の場合は、真ん中かやや上あたりの“分からない度”でしょう。

 ボーステックさんは、ファミコンゲームのリリースは少ないメーカーです。当時豪華なジャケットに魅かれて買ったファミコンディスク「暗黒要塞レリクス」(1887年)は、敵が出ても、アイテムが出ても、画面が切り替わっても、歩いても、そのたびにロードで止まってしまうのが特徴でした。そのうえ即死系のゲームでもあるんですが、即死したら真っ暗な画面に「おまちください」というテロップが出て、長い間待ってようやくロードしたと思えばそこから「ゲームオーバー」という画面が出るという斬新さでした!

 ゲームをしている時間よりロード時間が長いんじゃないかと思うほどロードに泣かされたのです。なので大好きな『めぞん一刻』といえども、同じくボーステックさんからのソフトということで、ロード地獄や即死系を引き継いでいるのではないかと、ジャケ買いせずいったん構えていたんです。カセットなら大丈夫だろうと踏んで、勇気を出して買ったものでした。

 結果、ロード地獄にはならなかったのですが……、レリクス同様、高橋留美子作品にもかかわらず“死にゲー”なのでした。

 アニメでもエンディングまで職業や経歴などがいっさい明かされることなく、高橋留美子先生自身も不明と言い続けた、謎のままだった四谷さん。このゲームでは、なんと! 四谷さんに主人公・五代くんは殺されるんです!

窓から飛び降りると当然死ぬ。ふりだしへ。

 物干し場という高い場所が、即死ポイントなのですが、ドアを塞がれたり、ハシゴを取られたりで、四谷さんにやられます。いつもの無表情な顔で「飛び降りるしかないですね」と促されて、飛び降りて即死ゲームオーバーとなります。単にゲームオーバーとせず飛び降りさせるあたりに、製作者のこだわりを感じます。

■『めぞん一刻』が復刻されないのは「思い出の写真」のせい?

 アニメや漫画が原作のゲームは権利関係が複雑ですが、それでも復刻されるものも少なくない。ですがこのファミコン版『めぞん一刻』はSwitchオンラインなどへの移植は非常に難しいと言われています。というのも、このソフトに関しては、ゲームの目的である「思い出の写真探し」、この写真が今となっては大きな問題になりそうだからです。

 その写真とは、幼少期の管理人さんが無邪気に服を脱ぎ散らかしている写真……。

 これも昭和だからこそ許された表現なのかもしれません。時代は変わりますからね。

 まぁ、復刻移植ゲームでは、光が強い部分変更は当たり前ですし、こういう部分をカットや変更することもあります。ただ1枚、なんとかこの管理人さんのプライベート写真問題をクリアしてもらって、Switchオンラインに移植をしてもらいたい。何度もトイレに入り直したりせずどこでもセーブ機能を使って、四谷さんに殺されても巻き戻し機能を使って、最新機でファミコン版『めぞん一刻』をやってみたいものです。

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