関純治(撮影・弦巻勝)
関純治(撮影・弦巻勝)
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 僕にとって、テレビゲームの一番の魅力は、「人と気軽に競い合うことができる」というところです。結局、生きていて最も楽しいのは、他の人とコミュニケートしている時間だと思うんです。ゲームは、その最高のツールになれる。

 トランプやボードゲームもその1つですが、テレビゲームの場合、ルールや計算を自動でしてくれます。遊ぶうえで、これはとても便利ですよね。もちろん、テレビゲームには、一人でじっくり遊ぶという側面もあります。映画や小説と違って、テレビゲームは自分が主導権を持って、物語を疑似体験していける。これも、テレビゲームならではの魅力です。

 ただ僕は、個人的にも多人数でワイワイ遊ぶゲームが好きで、映像がキレイ……というよりは、ルールの面白さやアイデアで勝負するようなゲームを作っていきたいんです。シンプルな操作でも面白い、『テトリス』のような方向性ですね。

 今年、僕がリリースした『伊勢志摩ミステリー案内~偽りの黒真珠』は、最新のゲーム機で遊べるミステリー作品ですが、パッと見では完全に“ファミコン”時代のゲームです。ドット絵といわれる、昔ながらのグラフィックで作りました。最近主流となっている3Dの豪華な映像とは、一線を画していますが……だからといって、僕はこの作品を懐古主義では作っていません。僕にとって、『~黒真珠』は、レトロな表現を使った最新のゲーム。操作もルールもシンプルにするという、僕の作りたいゲーム像に、ファミコン風がピッタリだったんです。

画像は『伊勢志摩ミステリー案内 偽りの黒真珠』公式サイトより

 発売当初は、“単に古臭い”と言われてしまうかなと思っていましたが、幸いそんなことはありませんでしたね。意外と、今の子どもたちにファミコン時代のゲームをプレイさせても、すごく楽しく遊ぶんですよ。実は、ゲームの面白さって映像のリアルさだけじゃない。ファミコン風の表現でも、今の時代にちゃんと通用するんだという確信が持てました。

 最近はゲームの価値が落ちていて、昔はお金を払って遊ぶのが普通でしたが、今は“フリーミアム”、つまりタダで遊ぶのが当たり前になっています。これはゲーム業界に限らず、今の世の中、全般に当てはまることかもしれません。タダで遊んだものに文句を言われるのは、作り手としてはすごく腹立たしい(笑)。でも、タダじゃないと誰も遊んでくれない。これは大きなジレンマです。でもその一方、今は一人でゲームを作って発信できる時代にもなっています。以前なら、ゲームは大きなメーカーでなければ発売できなかった。誰にでもチャンスがあることは、小さな会社でゲームを作っている僕のような人間には、とてもありがたいことです。

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