パンサー菅と『BLACK BIRD』第1巻
パンサー菅と『BLACK BIRD』第1巻

 どうもはじめまして、私パンサーという三人組アカペラユニットの高音域担当の菅良太郎というものです、以後お見知り置きを。

 私37歳男子なのですが、少女漫画が好きでこのふたまん+で少女漫画についてのコラムを書かせて頂いている次第でございます。今回は少女と天狗が恋に落ちる作品を紹介したいと思います。本当の話をしています、決してふざけているわけではございません。

 その作品は、桜小路かのこさんの『BLACK BIRD』。全18巻、累計350万部売れている名作でございます。

 この漫画の主人公の原田実沙緒は人には見えないものが見えてしまういわゆる霊感女子。本人には見えるが実害はないので普通に過ごしてきたのですが、実は100年に一度生まれる特異体質で、妖怪がその血を飲めば寿命が延び、その肉を食らえば不老不死に、花嫁に迎えればその一族に繁栄をもたらすという妖怪にとっては特別な『仙果』という存在だったのです。

 16歳の誕生日が妖怪たちにとっての解禁日で、その日から狙われまくり。まるで妖怪たちにとってのボジョレーヌーボー。第1話でヒロイン・実沙緒が妖怪に乗っ取られたセンパイからいきなりカッターで首の頸動脈切られて血吹き出す少女漫画はこの作品しかないんじゃないでしょうか。

 そんなピンチにさっそうと現れるのは、小さい頃お隣に住んでいた少し年上の男の子。今でも忘れられないでいる淡い初恋の思い出の相手です。

「迎えに来たぞ、俺の花嫁だからな」

 その背中には黒い翼が生えていて、妖怪は恐れおののき初恋の相手は天狗ということが発覚。天狗の彼は一瞬でその妖怪を倒し、実沙緒の首の傷を舐めることによって治します。そして問います、今日みたいに他の妖怪に喰われるか、俺に抱かれて花嫁になるかどちらか選べと。そこで気絶する実沙緒。朝になりすべては夢だったと思いますが、全校集会で新しい先生が赴任してきます。

 それはまさかの天狗だった……。

 自分で文章書いてて分かります、怒涛の展開です。

 最初盛り盛りすぎてこれ大丈夫か? と思ったんですが、これが話が進んでいくほどにどんどん面白く、少女漫画的な演出はしっかり残しつつもストーリーが深くなっていくんです。

 天狗と恋愛? そんなんできる? って思いますよね。

 そもそも皆さん天狗と言われて思い浮かべるのって、あの顔真っ赤で鼻長いやつですよね。いやいやこの天狗、超イケメン。しかもヒロイン大好き系オラオラドSなんです。そしてエリート一族の長。

 ストーリーにも関わってくるんですが実は次男なんですね。普通一族の長って長男がなるじゃないですか。でもこの天狗、幼い頃から好きだった実沙緒の為に血のにじむような努力をして一族の長になったんです。

 私それを知った瞬間、ダーツのブルに入ったときの音が頭に鳴り響きました。

 そしてその脇を固める補佐的な四人の天狗も全員タイプ違いの超イケメン。もう妖怪版F4。そして長のお世話役に小さい三つ子の天狗の男の子たち。これもギャン可愛。更に長の座を奪われたミステリアスな長男……この一族だけでも盛り盛りなんです。少女漫画界のビュッフェ。好きなのいっちゃってください。

 もちろん少女漫画なので天狗にひかれていってしまう実沙緒を奪おうとするライバルが現れるのですがそれももちろん妖怪。狐の一族です。そして更に実沙緒から天狗を奪おうとする美女が現れます。もちろんそれも妖怪。白蛇の一族です。

 ごめんなさい、一応確認なんですがついてきてくれてます? 自分でもちょっと何書いてるのか分からなくなってきました、たまにこんな夢見たんだよね、って内容懇々と説明される不毛な時間あるじゃないですか、あれに思えてきました。

 でもね、僕の文章じゃなく作品自体を読んでくれさえすれば染み入るようにスッと入ってくるし、どんどんキャラクターに愛着もわいてくる。話が進むにつれ壮大になっていくストーリーに涙なしでは読めない傑作だと思っています。これで泣けないなら感情欠落してます。

 そして、最後にこれだけは声を大にして言わせてください!

 ちょっとだけエッチです。

 はたして妖怪と人間の恋愛は成立するのか。ファンタジーに興味がなくても、だまされたと思って読んでほしい、必ず教えてくれてありがとうと思わせますから!