片桐仁(撮影/弦巻勝)
片桐仁(撮影/弦巻勝)
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 僕は中学の頃から、油絵の、絵の具が重なる立体感が好きで、展覧会にもよく足を運んでいました。大学も美大に進みましたが、油絵のほうは落ちちゃって、受かったのは版画学科。版木を作るのは好きだったんですが、刷った版画はずっとイマイチでした。周囲からも「おまえは版がいいな」と言われていたほどで。僕自身、油絵に比べて、刷り上がった版画の平べったさが、どうしてもイヤでした。

 そんな中、教職の授業で彫刻を作る機会があったんですね。自由に作らせてもらったんですが、これがめちゃくちゃ上手にできたんですよ。「すげえうまいじゃん!」って、美大に入って初めて褒められた。そして僕は実在するモノが好きなのかもしれないと、そこで気がついたんです。

 思い返せば、子どもの頃からプラモデルが大好きでした。世代的にはガンプラど真ん中。『機動戦士ガンダム』が大好きでしたし、爆発的なガンプラブームもあって、僕もハマってしまいました。友達2人に、「誕生日プレゼントにガンプラをくれ」ってお願いしたら、両方からザクレロをもらったこともありましたね(笑)。ザクレロですよ? カッコ悪くて、一発でアムロにやられちゃうヤツですよ?(笑)

 でも、それを何とかカッコよく見せようと改造しましたね~。

 大学に入った当時には、『ガンダム』の新作アニメの人気は、やや下火傾向。子どもがついてこず、大人のファンばかりになっていました。でもプラモ界隈では、ガンダムの手をパテで作るっていうのが、盛り上がっていたんですよね。これ、すっごく難しいんですよ。

 ガンダムのプラモって、顔は基本動かない。だから、ジオラマで写真を撮るときには、手で表情を作って芝居をさせるんです。ただ、もともとついている手は、カクカクしていて、サムアップさせたくても、うまく形を作れない。そこに、手を粘土で作ってしまう職人が出てきた。それを見て「俺もできるんじゃないかな」って思ってやってみると、パーツの手がちっちゃすぎて、全然できない(笑)。でも、パテで何か作るのは楽しいなと、目覚めたんですね。

 プラモの改造をして、パテで粘土に出会った――。プラモはあくまで趣味で、アートとはかけ離れていると思っていたけど、僕の創作の原点は、実はここかもしれません。

 大学卒業後は、「ラーメンズ」としてお笑いの仕事をしていました。そしてあるとき、青年漫画誌から連載の話が来たんです。「さぁ何をやろうか」と考えて、そこで毎回、粘土で作品を作ることにしました。

 実は、その前に別の雑誌企画で、たとえばゲタをお題に何かを作るみたいなことをやっていて、これがとても面白かったんですね。しかも、他の芸人も同じようなことはやっていない。だからこれを連載でやってみようと。

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