パンサー菅が語る、羽海野チカの傑作『ハチミツとクローバー』の魅力
パンサーの菅良太郎さん (写真は著者提供)
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 どうもみなさん、私、吉本興業でパンサーというアイドルユニットで玉虫色担当の菅良太郎と申します、以後お見知り置きを。

 私、38歳男子なのですが、少女漫画が好きでこのふたまん+で少女漫画についてのコラムを書かせて頂いている次第でございます。さて今回紹介させて頂くのは羽海野チカ先生の『ハチミツとクローバー』でございます。

 タイトルは知ってるよ、でもどんな内容?って方もいらっしゃると思いますのであらすじを本当に簡単に説明すると、

 美大生・竹本裕太は同じアパートに暮らす先輩の森田忍や真山巧らに囲まれ大学生活を送っていた。ある日、竹本は桜の木の下で見知らぬ少女に出会い、一目惚れしてしまう。真山はその様子を目撃し、密かに竹本の恋を応援する。彼女は恩師である花本修司の従兄弟の娘・花本はぐみだった。

 10年以上前の作品ですのでコラムを書くにあたり読み返したのですが、感想がいい意味で難しいです。羽海野先生のタッチってパッと頭の中に出てくるくらい印象的でかわいらしいと思うんですが、意外と重めの話でもあったり。独特だなぁと思ったのはヒロインのはぐみちゃん心理描写が極端に少なく、何を考えているのか分からない。少女漫画はメインヒロインの心理描写の揺らぎで、あれ? 今までこの子が好きだったのに、今の行動でこっちに引かれ始めちゃってんじゃないのかい? みたいな進み方がすごく多いんですね。でもはぐみちゃんにはそれがほとんどない。

 不思議な子なので自然といえば自然なのですが誰に引かれているのか、そもそも引かれてもいないのかよく分からないのが新しいと思いました。

 周りを固めるキャラクターも決してサブキャラじゃないんです。ってかこれいったい誰が主人公なのか僕はいまだによく分かってないです。それぐらい、みんなの話が濃い。エスプレッソです。いや、豆を直接噛んでるぐらい濃いかも。

 ベタ気味の少女漫画だと思って読むと全然違うので面食らうかもしれません。恋愛はもちろん要素としてありますが、青春群青劇として読むのがいいかもしれません。

 全10巻なのですがとてもゆっくりお話は進んでいきます。ガッと動き出すのは7巻以降でしょうか。でも僕的にはそのペースが心地よかったです。とにかくゆっくり進む、お話に出てくる人出てくる人すべてがハートフル。大学の先生だったり親戚だったり、商店街のお店の人だったりのやり取りがステキすぎてほっこりします。今回タブレットで読んでいたのですが、夢中になり過ぎて充電するのを忘れ、電源が切れたときに真っ黒な画面にハートフルな笑顔の自分が写っていました。

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