こうして私は7月に留学へ旅立つこととなりました。デンマークに到着してまず驚いたことは、とにかく田舎が田舎!!! 山もない土地なので、広大な牧草地が広がっていて、癒しの光景が目の前にありました。私はユトランド半島のかなり北のほうにある、小さな街の家族にお世話になることになりました。この街は近代的なお店があったり、周りの村と比べると都会な街でした。

 そんな素敵な街への留学はとっても優雅でした。街中や森をサイクリングや散歩をしたり、日光浴をして肌を焼いてみたり、牧草の匂いを感じる風を楽しんだりしていました。学校では定期的にパーティーがあったりして、音楽をかけながら初めて自由にダンスを楽しんだりしました。

 そんな楽しい日々を過ごしつつ、他の留学生やデンマーク人が私を日本人だと知ると「漫画やアニメが大好きなんだ!」と積極的に話しかけてくれることが多いことに気がつきました。

 パイレーツオブカリビアンのジャック・スパロウに激似のイタリア人に呼び止められ、何かと思ってついていったら、いきなり壁を登りはじめて「見て見て!? 今の僕NARUTOみたいじゃない!?」というパフォーマンスも見せられたこともありました笑笑。

 その時代の日本は今とは違いアニメや漫画に寛大ではなくて、私自身もオタクを隠して生活していたりしました。けれども、海外に出てみるとアニメや漫画はジャパニーズカルチャーとして多くの人に受け入れられていました。

 その光景を目の当たりにして、日本はこんなに良い文化を持っているのに、それを隠すことが逆に恥ずかしいなと感じました。もちろん、アニメや漫画に興味のない人にこんなに素晴らしい文化だとおしつけるのは違うと思います。ただ自分が好きなのにそれを隠すことがどんなにばかげていることか、私はそのときに気がつきました。海外に行ってはじめて日本の良さを感じることができたのです。

 そのときはまだ声優という職業に興味がなかったのですが、サブカルチャーに関われるような仕事が将来したいと考えるようになりました。このデンマーク留学は私にとって今の仕事のきっかけになる基礎の基礎を作ってくれました。

 私はこの留学以来デンマークに行けていません。いつか機会を作って、デンマークの地を踏めたらいいなと思っています。

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