声優・徳井青空「平成生まれの夏休みアニメといえばデジモン!」【そらまるコラム・第9回】の画像
徳井青空(写真は著者提供)
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 こんにちは、声優の徳井青空です。夏休みのテレビアニメといえば? あさりちゃん? キン肉マン? 少年アシベ? それともやっぱりタッチ? 朝だけでなく、子どもの頃は夕方にもゴールデンにも家族でアニメを見ていた気がする。

 平成初期、小学生の夏休み。私が育った千葉県の海沿いの田舎にも、ラジオ体操をするという今考えても毎日は必要なさそうな日本のベタなイベントがあった。せっかく学校が休みになったというのに、わざわざ早起きして決まった場所に集まらなければならない。私の地域では、近所の集団登校と同じチームごとに行われていた。子どもの頃からインドアだった私は、どうして休みの日まで学校のメンツと顔を合わせなきゃならないんだ……ラジオ体操ぐらい家の中でも出来るし布団の上でやれば二度寝までの時間短縮になって効率がいいのに……休日の起床時間まで管理されていることが納得いかない……小学生に自由はないのか? と、まだ日が昇りきっていない太平洋に向かって文句を垂れ流していた。

 だいたい、運動神経の悪い私には体操やストレッチが身体のどこにどういうふうに効いているのかまったく分からない。ゆえにラジオ体操とは、音楽と指示の流れるなか手をぶらぶらしたりぴょんぴょんしたりする、筋肉や血流とはまったく無関係の表層的で形式的な、ただポーズを真似ている時間だったのだ。

 ストレッチで身体が伸びて気持ちいい、と感じられるようになったのもだいぶ最近のことだ。運動の出来る弟に「この体操はどこの筋肉に向けてやっている?」と真面目に質問したのもまた近年のこと。これが運動音痴あるあるでないのなら……え、なんだと思いますか?(笑)

 ラジオ体操が終わる頃にはすっかり日が昇り、パジャマからスッキリ着替えたばかりのはずの体は真夏の太陽でじっとり汗ばみ、沿岸部特有の潮風でまんべんなく塩コーティングされベッタベタにキマった塩分過多の肌が完成する。これがラジオ体操のうっとうしさを最高潮まで押し上げるのだ。せめてクーラーの効いた室内で、エンディングにはお疲れ様と濃いカルピスの一杯でも配ってくれたらいいのに。

 参加証明のスタンプ……。手先は器用だから偽造スタンプで出席をごまかしたいところだが、”弟”という元気のいい監視が一緒だったことを思い出して諦める。そんなうつうつとしたスタートで始まる夏休みの毎日。

 ラジオ体操のログインスタンプ収集、宿題のドリル、読書感想文のための読書、赤ペン先生のシールを集めて交換できる漫画家セット欲しさに始めた某通信教育……。地面を掘ってホースで勢いよく水を噴射し砂利をまき散らしたり集めた貝殻を粉々に踏んづけてコンクリートになすりつける暇も無いような忙しさだ。

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