■コンマ数秒を削る「面白さ」

 従来のレースゲームの目的は、時間内にコースを完走したり、コンピュータが操作するマシンと順位を競ったりするものが大半。レースゲームである『F-ZERO』も基本的には後者に該当しますが、それとは別にラップタイムを極限まで詰めていく「タイムアタック」という楽しみ方も教えてくれました。

 前述した通り『F-ZERO』にはショートカットできる場所が存在し、1周ごとのラップやクリアタイムもコンマ2ケタまで細かく表示されます。

 主に舞台となったのは、多くの人が一番最初にプレイすることになるスタンダードなステージ「MUTE CITY I」。当時、雑誌などに公開された任天堂が持つ伝説の記録が「1分58秒97」。全5周のコースなので1周24秒ほどで周回すれば達成できるのですが、これが高すぎる壁でした。最初の頃はバグやウソなどでは……とささやかれたほどです。

 しかし、スタート時にライバル車にワザと追突させて加速する「ロケットスタート」や、ダートとガードビームの隙間を走り抜ける「一点読み」といったテクニックが次々と見つかり、これによって任天堂の記録が本物と認知されると同時に、そのタイムを追い抜くプレイヤーまで現れました。

いかにタイムを削っていくかの戦いに燃えた

 私も友人と切磋琢磨しながら練習を重ね、1分59秒台までは出せるようになりましたが、さすがに58秒台は無理でした。ですが、そのタイムを縮めるための方法をみんなで議論しながら遊んだのは良い思い出です。

 ちなみに現在でもタイムアタックを続けている方がいらっしゃるようで、そのタイムは1分57秒台に突入したとか……本当にすごいですね。

 当時の新ハード「スーパーファミコン」の性能を世間に知らしめたこのローンチタイトルがなければ、任天堂の大人気シリーズ『マリオカート』も生まれていなかったかもしれません。そんな偉大なゲーム『F-ZERO』とスーパーファミコンが発売から30年が経過した今も、ファンから愛され続けていることが個人的にはとてもうれしく思います。

(ふたまん編集部)

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『F-ZERO』懐かしのゲーム画面