「ヤバイ……絶対ヤバイ、人類マジヤバイ……」

 アメリカではオバマがアフリカ系初の米大統領への道をばく進する一方、リーマン・ショックに向け崩壊が進み、日本では岩手・宮城内陸地震や秋葉原通り魔事件が発生、エド・はるみは「グ~ググ~ッ♪」と叫んでいた2008年夏。週刊大衆編集部の裏部隊(通称・シルミド→理由はいつの日か)のデスクで、一人の男がブツブツと呟いていた。

 男の手には愛読誌『ムー』。視線の先には「徹底検証マヤ予言」の文字が。そう、この頃、「2012年人類の歴史が終焉する」という、いわゆるマヤの終末予言がオカルト好きの垣根を越えて一般の人々にも広まり始めていた。

 男が属する裏部隊は、正式名称・増刊大衆編集部。それまでも『人妻大衆』『アジアン大衆』『ロシアン大衆』『金儲け大衆』などなど、大衆と名がつけば何でもありと、数々の様子のおかしい増刊誌を作ってきた。

「せや、今こそオカルトや! ムーみたいな雑誌で世の真実を問うんや!!」

 北関東のどん詰まり出身のくせに、嘘くさいことこの上ない関西弁‟ふう”で叫ぶと、男は猛烈に企画書を書き出した――。

■オカルト雑誌「冬の時代」になぜ船出する? バカなの?

 と、もったいぶって書き出しましたが、要は何でもアリの編集部でお鉢が回ってきたオカルト好きが、コッソリ始めた雑誌が『週刊大衆ミステリー増刊 奇談』だったわけです。

 80年代から90年代にかけてこそ『トワイライトゾーン』、『ワンダーライフ』、『ボーダーランド』などなど『ムー』の競合誌も花盛りで、オカルト界も賑わっていました。しかし、どれも諸事情により廃刊となり、「ムーの競合誌を出すと、担当者や出版社が呪われる」との噂も囁かれるほどでした。

 もちろん、この当時も怪談文芸専門誌『幽』(現在は『怪と幽』)や、未解決事件や陰謀論など『ムー』とは違った切り口で人気だった『不思議ナックルズ』(後に『怖い噂』)もありましたが、UFO、UMA、歴史ミステリーに超古代文明、地震予知など、“ベタ”なオカルトネタを扱った雑誌は『ムー』以外全滅の状況。

 しかも、『ムー』は当時で30年の歴史を誇る老舗。“オカルト界の総合月刊誌”“ハイクラス・オカルト雑誌”の異名を取るほど、読む側にも記事の内容を読み解くだけの「オカルト偏差値」が必要なクオリティのもの。

「あ~、モケーレ・ムベンベに会いたいなぁ」

「やっぱ超古代文明は異星人の遺産なのかなぁ……」

などと、鼻クソほじりながら空を見上げているだけのボンクラ(まあ、私のことですが……)でも、イチからわかるオカルト雑誌があったらいいな。そんなコンセプトで企画はスタート。