現在、絶賛公開中の短編映画『サマーゴースト』。3人の高校生と、「サマーゴースト」と呼ばれる幽霊との邂逅から物語が動き出す本作で、原案・監督などを手がけたloundrawさんにインタビューを敢行。前編では、制作の経緯や、本作でこだわり抜いたという光と影の美しい表現と、声優陣の魅力を探りました。

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乙一さんのプロットに「オーラ」を感じた

©︎サマーゴースト

Q.公開中の現在、監督のもとにはどんな感想が寄せられていますか。


「(取材時)正直、SNSを見るのが怖くて、ちゃんと見れてはいないんです(笑)。友だちやマネージャーさん越しにもらった感想としては勇気をもらった、共感したという言葉をいただいております」


Q.本当に、上映時間と比すると濃密な映像体験であり、感情を揺さぶられる一作でした。本作は、監督の書かれた一枚の絵がそのスタートだったとお聞きしています。映画化までの道のりをお教えいただけませんでしょうか。


「映画の制作が決定して、乙一さんとの脚本打ち合わせの中で、線香花火をしているときだけ幽霊に会えるという物語のプロットが思い浮かんだんです。そのときに、ちょっと使えるんじゃないかなと思ったのが『Summer Ghost』という僕が描いた一枚のイラストでした。そのイラスト自体は映画のお話の一年くらい前に、とくに意図なく制作したものでした。けれど、そのイラストを描いた経緯があるんです。当時の僕はイラストレーターとしてお仕事をいただいていたのですが、こういうものを描いてほしい、loundrawはこういうものを描く人だということを前提にした期待があり、ある種過去の自分をなぞる形のものがどうしても多くて、それが辛かった時期でした。

 そこで、自分の描いてきたものとは全然別の絵を描いてみたいという思いで描いたのが『Summer Ghost』だったんです。それまでの自分から自由になりたくてイラストレーターになったわけですが、そこでもやはりうまくいかないことがあって、そのブレイクスルーにできたのがこの絵だったんです。プロットを作っていく中で、この3人の上手く生きていけない子たちの物語に、この絵はすごく合うんじゃないかと思ったのがスタートなんです」


Q.映画制作が決まってから、乙一さんとはどんな会話を?


「3人がどのように現実に対して、ネガティブな気持ちを抱いているのかは大切にしたところです。それをどのくらいお話として描くのか、そもそも注意していて。乙一さんから第一稿の脚本が上がった段階で、それを僕がビデオコンテに反映したものをお戻しして、そのやりとりを何度か繰り返し、彼らの感情をどう描写するのかを詰めていきました。乙一さんが文字として面白いものをお送りくださり、それを僕が映像にして提案させていただくという形です。それを半年強くらいの期間でやっていきました。結果、完成脚本をいただいたタイミングでほぼビデオコンテも上がっているという状態で、それが2020年の終わり頃ですね」


Q.物語の中で、乙一さんならではの魅力をどんなところに感じましたか。


「やはり、キャラクターの立ち位置であったり、結末のようなところで、いち読者として思ったのですが本当にオーラを感じました。必ずいい物語になるという確信のようなものを一番最初に感じました。その中で、花火や幽霊、人間の生命に対して、一貫した儚さみたいなものをすごく大切にされているなと思ったんです。そこで僕の方も、ロジカルなお話ではなく、キャラクターの心情の儚さを、背景の色などで感じてもらいたいと思ったんです」

©︎サマーゴースト