現在展開中の劇場版『DEEMO サクラノオト -あなたの奏でた音が、今も響く-』リレーインタビュー第3弾は、『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』『BLOOD+』の藤咲淳一総監督。第1回では作品に携わった経緯などを語ってもらったが、今回はアフレコの様子や裏話をインタビュー。声優だけでなく俳優・タレントも起用した本作の収録の様子に加え、監督自身が影響を受けてきた作品についても話を聞いた。(全3回)

 

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竹達彩奈=アリスを軸に音を作り上げていった 

 

(C)Rayark Inc./「DEEMO THE MOVIE」製作委員会

――ゲームからアニメーションになり、すべてのキャラクターに声がつきました。主人公の少女・アリスはゲーム版から引き続き竹達彩奈さんが担当されていますが、他のキャスティングには藤咲総監督は関わられたのでしょうか?

 

僕はまとめ役ですから、キャスティングはもうプロデューサーにお任せで、訊かれたら意見を言うくらい(笑)。でも結果的にとてもバランスの良いキャスティングになりましたし、皆さんとても上手な方ばかりでした。たまたまかもしれませんが、音楽学校パートは声優さんで、“Deemo”世界のパートは役者さんやタレントさんで固めてもらえたのも、すごくやりやすかったですね。

 

――実際のアフレコはいかがでしたか?

 

役者さんやタレントさんたちも皆さんうまかったので、すごく助かりました。ニュアンス的なことは注文しましたが、芝居の指導などはほとんどしていないんですよ。ミライ役の濱田岳さんは本当にうまくて、音響監督や松下監督もみんな「うまいね!」と言っていましたし、くるみ割り人形役のイッセー尾形さんは独特の世界観で突っ走っていかれるので、もうお任せでした。匂い袋役の渡辺直美さんもお忙しい中来てくださって、ほとんど一発で見事に入れていただけました。
ただハンス役の松下さんは今回が初声優ということで、「声が出るといいな」と心配していたんですよ。役者さんが始めてアフレコするときは、声量が足りなくて苦労することが多いので。でもその心配は杞憂でしたね。ご自分でプランを考えて、セリフもしっかり覚えてきてくださって、声もしっかりマイクに届いていたので、何の問題もなく収録できたので助かりました。

 

――声優の方と俳優の方とでは、やはり大きく違うものでしょうか。

 

やっぱり声だけの表現は難しいんです。役者さんは普段カメラや観客の前で演じますから、顔の表情や体も含めたトータルでの表現をされますよね。でも声優さんは声のみですべての感情表現をしなければいけない。絵はありますが、最近は絵がわからない状態で収録することも多いので、やっぱり声だけで感情を乗せていく必要があるんです。それには声量や音の出し方、イントネーションや強弱のつけ方など、声だけで伝えるための技術が必要になる。人によると思いますが、そこが声優さんと役者さんの違いかなと思います。どちらが良い悪いではなく、普段トータルで表現している方に「声だけでやってくれ」というのは、すごく難しい注文なんです。でも今回は本当にラッキーで、こちらから言うことはほとんどないというくらい。もちろん部分的な修正は多少ありましたが、大きな直しはほとんどなくて、皆さん短時間で収録を終えることができました。

 

――17歳のアリスたちが登場する音楽学校パートのほうはいかがでしたか。

 

アリス役の竹達さんはもうお任せ、ノータッチです。日本語版ゲームからアリスの声をやっているご本人ですからね。逆に言うと彼女が軸になっているので、僕としては「アリスはもういるんだから、彼女をベースに考えていけばいいんだな」という感覚でした。幼いアリスだけでなく、17歳のアリスもほとんどお任せでしたね。竹達さんも脚本や絵コンテから「成長したらこうなるだろう」というシミュレーションをしてくれていたので、微調整をしたくらいかな。あとはもう自然にやってもらいました。
ただ17歳のアリスはあまり喋らないので、同級生のサニアやロザリアとのバランスが難しいかもしれないと思っていたんです。でもそこは、サニア役の鬼頭明里さんやロザリア役の佐倉綾音さんが上手にバランスを取ってくれたので、リテイクはほとんどなかったですね。