内山昂輝インタビュー(2)エンジンのかけどころがないのが寡黙なキャラクター独特の難しさ/アニメ『ダンス・ダンス・ダンスール』特集の画像
『ダンス・ダンス・ダンスール』場面写真より(森 流鶯)

常に陽のオーラを放っている主人公・潤平を通して、バレエを熱量高く描いている『ダンス・ダンス・ダンスール』。疾走感溢れる本作に深い陰影と奥行を与えている要素のひとつが、内山昂輝演じる天才ダンサー・流鶯(るおう)の存在だろう。完璧に磨き上げられた静謐な踊りを見せる一方、人と話すのが苦手な引きこもりの少年とあって、彼が接する相手もセリフも限られている。そんな役ならではの意外な難しさ、そして内山が思う自身の演技スタイルについて、話を聞いた。(全3回)

 

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キャラクターにぴったりな素晴らしいキャスト揃い

流鶯が同居しているバレエ教師の千鶴と、その娘・都

――流鶯という少年は、バレエと親しい人しかいない閉じた世界から、主人公の潤平(CV.山下大輝)と出会ったことによって外の世界に出て行く……と言いますか、引きずり出されていきますね。そんな彼を演じるに当たって、周囲との関係性で特に意識した部分はありましたか?

 

彼は基本閉じているので、序盤は会話らしい会話が少なくて。関係性と言っても、「一緒に暮らしている都(みやこ/CV.本渡楓)には多少心を開いているんだろうな」とか、「潤平には基本的に拒絶なんだろうな」とか、それくらいですね。心を閉ざしている彼なりの幅の範囲で、どんな風にコミュニケーションを取るんだろうか、と考えていく感じでした。

 

――アフレコはお1人ずつだったのでしょうか。

 

大体は3人か4人くらいでした。会話する相手とは一緒に収録することができました。都や潤平とは大体一緒でしたし、あとは千鶴さんと一緒になることも多かったです。

 

――他のキャストの方々の印象はいかがでしたか?

 

皆さん、本当にキャラクターにぴったりで、素晴らしいキャスティングだなとまず感じました。あとは、僕は自分のことで精一杯なんですが、潤平というキャラクターはとにかく大変だろうなと思いながら収録を見ていました。潤平はそもそもセリフ量が多いし、突然歌ったりするし、踊るときも自分なりにメロディを鳴らしながら踊るキャラクターとして描かれているので。

 

――確かに潤平は喋ったり歌ったりと、常に何らかの音を発していますよね(笑)。

 

そうなんですよね。だから手数が多くて大変だなと思いながら見ていました。

 

――流鶯は手数が少ないキャラクターですが、それはそれでまた違う難しさがありませんか?

 

話によってはセリフが少ない回もあるので、エンジンをかけるタイミングがないというのはあります。セリフが多いと、たとえば1カット目から喋って喋ってどんどん階段を上っていく感じで良いリズムが生まれるんですが、Aパートの最後に一言だけ、なんて場合は身体を温める時間がないんですよ。その日の初手でいきなり完成にもっていかないといけない。セリフの少ないキャラは、そういう難しさがありますね。一話全体でセリフを積み重ねていって、調子を上げていくのではなく、そのシーンの雰囲気に一発で合わせないといけない。失敗したら録り直せばいいだけなんですが。

 

――しかも無口なキャラクターですと、口を開くときはたいてい大事なセリフだったりします。

 

そうなんです。ポツリと重要なセリフをつぶやく、みたいな。だから余計に、エンジンのかけどころが難しいんです。まあそういうキャラクターだと、エンジンがかかってない感じもいいのかもしれませんけどね(笑)。寡黙な人がポツリとつぶやくなら、いきなり大胆にしゃべるとは思えませんし。

 

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