ショートアニメ「色を知るたび、世界が広くなる」
ショートアニメ「色を知るたび、世界が広くなる」

山下大輝さんが就活生役を演じるショートアニメ『色を知るたび、世界が広くなる』の「就活篇」が、特設サイトおよび公式YouTubeチャンネルにて公開中! 8月25日(木)には、東山奈央さんが社員役を演じる「私の仕事篇」も公開予定です。

本動画は、色彩検定が頑張る人の背中を押す、感動アニメーション。キャラクターデザインを『ブルーピリオド』の山口つばさ先生、アニメーション制作を『SPY×FAMILY』のCloverWorksが担当。豪華タッグによるアニメーション動画に仕上がっています。

この公開を記念して行われた、山口先生、CloverWorks、色彩検定協会による座談会インタビューが到着しました。

 

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色彩感覚は誰でも身につけられる

キャラクターデザイン担当:山口つばさ
アニメーション色彩設定担当:CloverWorks 山口舞
企画担当:色彩検定協会 山中雄市

――本アニメ動画の制作に至った経緯や背景についてお聞かせください。

 

色彩検定協会 山中:ここ5年くらい、色彩検定協会としてアニメやイラストに絡めた広告を打つことが非常に多かったんです。アニメやイラストの中で色彩は非常に大事な要素ですし、日本が誇る文化を大切にしたいという思いもありました。それに加えて、(色彩検定が)将来アニメやイラストの道に進まれることを考えられている方や、現役でお仕事されている方のお力になれたらと思っています。
私自身、(色彩検定協会の仕事を通して)アニメの影響力を肌で感じていたので、今回そのお力をお借りして、より多くの方に色彩の楽しさを知っていただけたらなということで、制作をお願いすることになりました。

 

――山口先生とCloverWorksさんを起用された理由についてお聞かせください。

 

色彩検定協会 山中:山口先生にお願いした理由からお話すると、山口先生が手がけられている『ブルーピリオド』のアニメを拝見している中で、主人公の八虎くんの言葉に共感したことがきっかけです。八虎くんは、美術の世界に踏み込む前は特別な才能を持つ人だけが絵を描けると思っていた、と。でも実際に足を踏み入れてみると、そこにはいろいろな理屈があって、理詰めでも良い絵が描けるという考え方に変化していく。それって、色彩検定でも同じことが言えるなと。
デザインや色彩(感覚)って「センスがある人や才能がある人のもの」と考えられている方は非常に多いと思うんです。でも良い色使いにはルールがあって、それを把握することで、色を操る能力を身につけることができる。そういう部分でご理解していただけそうだなと思っていました。

 

山口つばさ:それこそ原作には色のお話も出てくるんです。アニメだと尺的な問題で説明しきれていない部分もあるので、ぜひ原作も読んでいただけたらと思います。

 

色彩検定協会 山中:CloverWorksさんにお願いした理由は、CloverWorksさんが手がけられている『約束のネバーランド』のアニメや『SPY×FAMILY』のPVを拝見している中で、クオリティの高いアニメーション制作をされているなと思っていました。また、原作を生かした作品づくりをされているという印象もありました。山口先生のキャラクター原案を生かした制作をしてくださるのではないかと思い、CloverWorksさんにお願いしました。

 

視聴者が違和感を抱かないような色選び

――皆さんの普段のお仕事と色の関わり合いについて教えてください。普段の仕事の中で、色をどのように扱っていますか?

 

色彩検定協会 山中:とにかく色のズレに気を遣いながら仕事をしています。とりわけ試験問題を作るときは神経を遣っていますね。少しでも色がズレると、正解が変わってしまうんです。「色について勉強しましょう」と言っている立場なのに、色がズレていたり、おかしかったりしたら、困惑させることになってしまう。せっかく時間とお金とやる気を使って勉強してくださっているのに、違うことを覚えさせるわけにはいかないので、公式テキストや試験用紙の印刷も色にこだわっています。

 

山口つばさ:漫画の場合、基本的にはグレーが多くて。色を使うのって表紙やカラーのカットのみで、言ってしまえばサブ的なところに入ってくるので、言葉にするのは難しいところなのですが……率直に言うと、色に関しては苦手意識があるんです。
自信を持って言える部分だと、漫画の中ではグレーの部分を気をつけるようにしています。デッサンをするときも、紙の上に(グレーの色味が)乗っているだけでも印象が変わるので、スクリーントーンを重ねるときも注意しています。例えば、ドットのトーンだけではなく、砂目のトーンや、実際に紙に描いてスキャンして水彩っぽくしたもの、時にはザラザラとしたブラシを使用して、単純に濃い色にするだけではなく、ニュアンスがどう変わるか気をつけています。それが色のことと言って良いのかはわからないのですが。
グレーって、単純に白と黒を混ぜるだけではなく、黄色と紫を混ぜてもグレーになるんですよね。そういう意識というか。黒と白の重なり方次第で、人間の受ける印象って変わると思うので、そこは気をつけるようにしています。

 

CloverWorks 山口舞:アニメの場合は、漫画・小説の表紙やカラーページなどの、元のイメージを崩さないことを意識しています。ただ、先ほど山口先生がおっしゃっていたように、漫画の場合は(通常のページが)グレーなので、表紙やカラーイラストがないという場合も多いです。そういった場合は原作者の方から「現場で色を決めていいですよ」とおっしゃっていただくことが多いので、そのキャラクターの性格を考えつつ「ピンクの服は着ないだろうな」「青はどうかなぁ」などと考えながら作っていきます。
アニメの場合は絵を見て楽しむ方が多いので、色のイメージが違うと、作品に集中できなくなってしまう可能性もあります。それはあってはいけないので、作品を見ていて邪魔にならない感じといいますか、視聴者の方が違和感を抱かないような色選びをする、ということを意識しています。色が目立ちすぎてしまうと、映像を見ている人は疲れてしまうと思いますので。特に映画の場合は長時間見られるので、色が単調にならないようにしつつ、色で目を引くようなシーンも作るようにしています。

 

――山口先生と山口さんにおうかがいしたいのですが、そもそもお二人は色彩についてどのように勉強されたのでしょうか?

 

CloverWorks 山口舞:私はアニメの専門学校に通っていたので、学生のときも学びました。私が通っていたときは学校では色だけの授業というのはなかったので、独学に近い感じですが。学生のときは色選びが得意ではなかったので、会社に入ってから学んだことも多いです。アニメではいろいろな色が使われており、特にオープニング、エンディングは変わった配色が使われることが多いので、アニメのオープニングをひたすら見て真似していました。そういったことをやりつつ、自分の好きな色を確立していく……といったことをしていました。

 

山口つばさ:最初に学んだのは……小さいころに絵画教室に通っていたんです。そこで絵の具セットを買ったんですが、赤・黄・青・白のみを使うというのがその絵画教室の方針でした。「赤・黄・青・白を混ぜればいろいろな色が作れるから」と。当時はそんなことができると思っていなかったので、「青と黄色を混ぜたら緑になるし、青と黄色と赤を混ぜたら茶色になるし、そこに青を多くすると黒っぽくなるんだ!」とすごく驚いて。混色の面白さをそこで学んだ感じでした。でも苦手意識はあるんですけどね(苦笑)。

 

いち読者としてワクワクするようなものを

――普段のお仕事と並行しての作業は大変でしたか?また、普段のお仕事と違うと感じたことはありましたか?

 

CloverWorks 山口舞:普段からいろいろな業務を並行していることが多いので、特に大変かと言われるとそうではなかったのですが、「色にこだわった短編」ということで、普段のTVシリーズとは違って細かく色の作業をしていました。TVシリーズの場合は長く放送するので、私の場合は、隔週で区切って、まとめて作業をすることが多いのですが、今回の場合は、普段テレビではやらないような色の指定もあったので、毎カット調整をしていました。カロリー的には高かったのですが、すごく楽しく作業できたので苦労するという感じはなかったです。

 

山口つばさ:普段出さないキャラクター造形でもあったので、私はずっと楽しかったです。だから大変なことはなくて。今はどんな風に動画になって、どんなリアクションが返ってくるのかが楽しみです。いつもと違うという点で言うと、漫画も回によって気をつけなければいけない部分が違うので、その延長という感じはありました。

 

――色彩に関わらず、お仕事をされる上で「これだけは譲れない」というポリシーやこだわりについてお聞かせください。

 

色彩検定協会 山中:ひとつは内容に嘘がないこと。広報の仕事をしているので、いろいろな記事にも出させてもらうことがあるのですが、広告を見て受検を考えてくださった方が「(言ってることが)違うな」と思うようなことがないようにしています。もうひとつは、記事でも今回の動画も、「色彩検定、◯◯日が受検日で」という単純な広告ではなく、見た方が楽しんでもらえるようなものにしたいなと思っています。以前、イケメンのイケボ講師が色彩について教えてくれるというコンテンツ(「教えて!色彩先生」)を作ったのですが、楽しんでもらえて、役に立つというものをなるべく発信したいなと。

 

山口つばさ:仕事をする上で共通して意識しているのは、自分がいち読者、いちファン、いちオタクだったときにワクワクするようなものでありたい、ということです。細かいところはいっぱいあるんですけど、まず考えるところはそこですね。(漫画を描く上で絶対に譲れないことについて)言語化するのは難しいんですけど……。ガチなことを言うと、締切を守ること(笑)。締め切りを守るということは、できるだけクオリティを落とさないということでもあると思うので。あとはその都度その都度、いろいろあります。
一概に言いにくいのですが、リアルなのと、リアリティがあるのとは、私の中では違いがあって、リアリティのラインというのは大切にしています。でも漫画においては「嘘じゃん」と思うようなことにも面白さがあると思うんです。だから嘘でもいい部分があるんですけど……例えば色彩検定のことだったり、『ブルーピリオド』の色の部分だったりは、その段階で最大限(嘘がないように)。ただ、漫画は長く読まれるので、その間に歴史的なものが変わる可能性もあるので難しいんですけどね。それこそ受検内容も毎年変わりますし。

 

CloverWorks 山口舞:私は「自分が楽しむ」ということが前提にあります。自分が楽しみつつも、最近「解釈違い」という言葉をよく耳にするので、そうならないように気をつけています。また、私も山口先生と同じなのですが、自分がいち消費者になったときに楽しめるか、というのも大切だと思っています。商品化用に描き下ろされたイラストを塗ることもあるのですが、「自分が欲しいかどうか」ということを考えています。

 

【PROFILE】
山口つばさ(キャラクターデザイン担当)

東京都出身。東京藝術大学絵画科油画専攻卒業後、アフタヌーン四季賞2014年夏のコンテストで佳作受賞。2016年に新海誠監督の作品『彼女と彼女の猫』のコミカライズでデビュー。2017年6月から「月刊アフタヌーン」で『ブルーピリオド』を連載中。

【PROFILE】
CloverWorks(アニメーション制作担当)

CloverWorksは、A-1 Picturesより2018年10月に新設分割したアニメーション制作スタジオ。国内外の視聴者に向けて、作品のつくり方やアプローチの仕方などに独自性を持って取り組み、さまざまなジャンルの作品制作にチャレンジしている。
代表作:「SPY×FAMILY」「その着せ替え人形は恋をする」「ぼっち・ざ・ろっく!」「ホリミヤ」「約束のネバーランド」など

 

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(山下大輝さん・東山奈央さんの特別コメントも掲載中!)

 

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