現在、大好評放送中のアニメ『メイドインアビス 烈日の黄金郷』。第1期が17年に放送され、総集編の劇場版2部作が19年に、完全新作の劇場版『メイドインアビス 深き魂の黎明』が20年に公開されたシリーズの第2期が、満を持して放送中。

好奇心と行動力の塊な少女・リコと、記憶を失ったロボット・レグが、謎の大穴「アビス」を「探窟」する本作。シリーズすべてで監督を務めるのはベテランの小島正幸。原作への想いや、作品作りへの矜持を語ってくださったインタビューをお届けしたい。

 

※ ※ ※

 

「原作に忠実に作るというのが基本ライン」

メイドインアビス

白い龍のような見た目のベラフとリコたちの邂逅。

©つくしあきひと・竹書房/メイドインアビス「烈日の黄金郷」製作委員会

――第1期ののち、総集編劇場版の前後編、そして新作劇場版が公開され、第2期が現在放送中です。まず、今回の企画を聞かれたときはどのように思われましたか。

 

第2期が続くというのは、それまで作ってきたものを評価していただいた結果だと思うので、非常に嬉しかったです。決まったのは、前の劇場版が終わった頃で、2年前くらいから動き始めました。その頃、この「黄金郷」編に関しては、原作でもまだ描かれていないことも多く、つくしあきひと先生のほうでイメージが固まっているところもあればそうでないところもあったんです。そこで、先生に聞き取りを行いながら、構成を考えていく感じでした。

 

――原作のつくし先生とはどのようなお話を交わされましたか。

 

その時は、いろんな問題が原作8巻までで起こっていて、そのお話をどう閉じるのかという部分で、いろんなお話を聞いていきました。というのも、僕自身、第2期の終わりまでの原作がない状態で、アニメ化に着手するのは初めてでしたし、結果的に原作がまだない中でアニメ化が動き出したことは、先生に色々と申し訳ない気持ちもありました。シリーズ構成、脚本の倉田(英之)さんにも、ご苦労をかけたと思います。

 

――しかしながら、倉田さんはじめ、過去シリーズのスタッフが再集結しています。

 

これは『アビス』に限ったことではないですが、どのセクションの方でも一人欠けたら別の作品になっていたんじゃないかという思いです。第1期からのスタッフに引き継いでやっていただいたことは、この第2期の原動力になっていると思います。

 

――制作の中で大変だったことは?

 

第1期のときは登場キャラクターも少ないし、シンプルな話だったんです。でも話が進むにつれて登場人物、アクションが増えていくのが『アビス』(笑)。それでいうと、今回は第1期の倍以上のカロリーがかかっていると思います。最初にそのカロリーをどう分散するかを念頭に置きましたし、それが制作上の命題でした。同時に、原作に忠実に作るという基本ラインをいかに守るかに心血を注ぎました。

 

――『アビス』のファンタジー世界を描くうえで、どんなことを大切にしていますか。

 

まず、僕は本作をファンタジーと捉えていないんです。『アビス』は話も、描かれる世界も絵空事じゃない。だから描かれているものは、リアルじゃないとダメだというのが僕たちの姿勢です。リアリティを大切に、画面作り含めて、考えていきましたね。

 

「バックボーンを描かないと、7、8話の悲劇が際立たない」

メイドインアビス

来たばかりの成れ果て村に対応していくリコ。

©つくしあきひと・竹書房/メイドインアビス「烈日の黄金郷」製作委員会

――画面作りで言うと、監督は第1期でも半分以上の話数で絵コンテも務めてらっしゃいました。

 

今回も12話のうち、10本の絵コンテを描いています。僕は、なるべくならどの作品も全部自分で絵コンテを描きたいんですよね。『アビス』の場合は絵コンテで、“全部のシーン、こうなりますよ”ということを示したい。たとえば、顔への光の当たり方や、背景の見え方というのは、最初の段階で決めていたほうが効率的なんですよね。スタッフのみなさんも絵コンテを見るわけで、共通認識として「こういう画面を作りたいのね」とわかるし、同じ方向を見れるんです。

 

――合理的な方法でもあるということなんですね。今回、リコ、レグ、ナナチの主人公3人を描く際、意識されたことはどのような点ですか。

 

第2期は、途中からみんな単独行動をするんですよね。「成れ果て村」にたどり着いた彼らが、それぞれの事象にどう反応するかということを大事にしました。そこでは第1期よりキャラクター性が明確にでているんじゃないかなと。リコは「成れ果て村」の中で彼女らしい行動をするし、レグはレグで過去の話が出てくる。ナナチはミーティの存在がいかにナナチの中で大きなものかが描かれる。3人でいれば、それはそれでアンサンブルがありますが、今回の話においては単独行動によって、もっと深い彼らの心の部分を感じてもらえるのではないでしょうか。

 

――リコの成長に関しては、どう捉えて描かれていますか。

 

確かに、リコはリコなりに成長しているとは思うんです。だけど、芯にあるものは変わってない子なんですよね。むしろ、リコの行動力の変わらなさを描きたい気持ちがあります。もちろん、彼女の行動力は1期からあるのですが、そこに磨きがかかっているという認識ですね。

 

――リコが、ヴエコの周りの触手を彼女が喋っている最中に抜くシーンにそれを感じました(笑)。一方、リコたちの物語とは別に、過去に黄金郷を目指してアビスに降りたったヴエコたち、決死隊「ガンジャ」の物語も語られていきますね。

 

7、8話は過去の話で、「成れ果て村」のできる過程を描いています。本作の主人公はリコたち3人だけど、2期だけでいえば、ガンジャ隊のヴエコや「成れ果ての姫」ファプタも主人公だと思うんです。ヴエコは1話で生い立ちが語られますが、彼女のイルミューイに対しての思いやバックボーンをちゃんと描かないと、7、8話の悲劇が際立たないと思いました。

 

――そこで言うと、ワズキャンというキャラクターも魅力的ですよね。

 

ワズキャンに関しては僕自身も、正直いまだによくわからないキャラクターです(笑)。彼には、計り知れない何かがあるんじゃないかなという感じがありますよね。