いい監督とは「自分のやりたいものを作り続ける人」

©2022 森見登美彦・上田誠・KADOKAWA/「四畳半タイムマシンブルース」製作委員会

――夏目監督は、アニメーションという表現の魅力はどんなところだと思われますか。

 

アニメーションって、独特ですよね。キャラクターがいて、その絵が動いてお話が進んでいきますが、最初は白い紙から始まるわけじゃないですか。つまり作り手の主観、考え方や美的感覚をダイレクトに表現できるものだと思うんです。湯浅監督が評価されているのもそこだと思います。トリッキーで大胆な考えを持っていて、それをそのまま映像化できる。そういう面白い人が作ったアニメーションが好きだなあと思いますね。

 

――イマジネーションをまるごと形にできるというのがアニメーションの強みですよね。夏目監督はそういったイマジネーションのために、日頃意識的にインプットされているものはありますか。

 

本などは読んで、普段からインプットを心掛けていますね。あと監督をやるといろいろな人と話す機会があるので、こっそり観察したりして、なるべく人間を見るようにしています。作品によりますが、なるべく主題に沿った取材をしたり、ロケハンもできるだけするようにしたり。ただ、監督ってバランスを取る仕事でもあるんですよ。個性を持たないといけないけど、作品を完成させる責任がある。わがままでなければいけないけど、チームをまとめないといけない。そこがなかなか難しいところですね。

 

――クリエイターでありながら、組織のリーダーでもなければいけない、と。夏目監督が思う理想の監督像というのは、どんな監督でしょう。

 

シンプルに「自分のやりたいものを作り続ける人」が、いい監督だと思ってます。つまり、作品に対するこだわりを持っていて、嘘がない人。間違っていることやうまくいかないことも多々あると思いますが、そういう風に自分に素直に動いている人は確かにいるんです。そういう人を見ると「いい監督だな」と思いますね。ただ、それで売れるかというと別の話なんですが(笑)。

 

――難しいところですね(笑)。本作は夏目監督にとって、どんな作品になりましたか。

 

自分にとって初めての映画監督作だったので、まずはそれが大きかったですね。大好きな森見さんの小説を手掛けられた嬉しさや、『四畳半タイムマシンブルース』という多くの方々に観ていただける作品を作れた喜びもあります。一方で、昨年作った「Sonny Boy」という作品はかなりニッチな感じだったので、またそういうコアな作品も定期的に作っていきたいなと。アニメってどうしても群像劇が多いと思いますが、一人のキャラクターにしっかり入り込んで丁寧に描くような作品をやってみたいんです。なので、今回のような多くの方に楽しんでいただけるエンタメ作品もやりつつ、仕事を干されない程度のコアさを保って(笑)、バランスを取りながらやっていけたらいいなと思います。

 

©2022 森見登美彦・上田誠・KADOKAWA/「四畳半タイムマシンブルース」製作委員会

 

【PROFILE】
夏目真悟 なつめ・しんご

青森県出身。ゲームグラフィッカーからアニメーターへ転身した後、J.C.STAFF、ゴンゾ、シンエイ動画、フリーのアニメーターを経て、TVアニメ「スペース☆ダンディ」(14年)で監督デビュー。その後、「ワンパンマン」(15年)、「ACCA13区監察課」(17年)、「ブギーポップは笑わない」(19年)などで監督を務めている。監督・脚本・原作を担当したオリジナルTVアニメ「Sonny Boy」(21年)は、第25回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門優秀賞を受賞。「四畳半神話大系」(10年)では第6話の絵コンテ・演出を、『夜は短し歩けよ乙女』(17年)では夏パートの絵コンテを担当。

 

「WEB声優MEN」の『四畳半タイムマシンブルース』関連記事はこちら

「WEB声優MEN」のクリエイターインタビューはこちら

 

作品情報
『四畳半タイムマシンブルース』
9月30日(金)より3週間限定全国ロードショー
ディズニープラスにて独占配信中
(配信限定エピソード含む全6話順次配信)

四畳半タイムマシンブルース

【キャスト】
浅沼晋太郎 坂本真綾 吉野裕行 中井和哉 諏訪部順一 甲斐田裕子 佐藤せつじ 本多 力(ヨーロッパ企画)

【スタッフ】
原作:森⾒登美彦・著、上⽥誠・原案 『四畳半タイムマシンブルース』(角川文庫/KADOKAWA 刊)
監督:夏目真悟 脚本:上田 誠(ヨーロッパ企画)
キャラクター原案:中村佑介 音楽:大島ミチル
主題歌:ASIAN KUNG-FU GENERATION 「出町柳パラレルユニバース」(Ki/oon Music)
アニメーション制作:サイエンスSARU
製作:「四畳半タイムマシンブルース」製作委員会
配給:KADOKAWA/アスミック・エース

 

【公式ホームページ】https://yojohan-timemachine.asmik-ace.co.jp/
【公式Twitter】https://twitter.com/4andahalf_tmb

 

©2022 森見登美彦・上田誠・KADOKAWA/「四畳半タイムマシンブルース」製作委員会


  1. 1
  2. 2