ピエール・リトバルスキー
ピエール・リトバルスキー

(この記事は2018年5月25日に発行された『サッカー批評89』(双葉社)に掲載されたものです)

取材・文・撮影◎遠藤孝輔 Kosuke Endo

W杯で優勝1回、準優勝2回の実績を持ち、Jリーグ創世記に日本でもプレーした名選手、“リティ”ことピエール・リトバルスキー。ドイツと日本の両方をよく知る男に、「なぜドイツが強くなったのか?」を教えてもらった。

 

ブンデスのスカウトはどんなことをしている?

――今日はお忙しいところ、ありがとうございます。まずはリトバルスキーさんの近況を伺わせてください。ヴォルフスブルクのチーフスカウトを務めているそうですね。

「そう、2010年にこのクラブに来ました。最初は(スティーブ・)マクラーレン監督のアシスタントコーチ兼通訳として。それからマガト監督だった頃も半年ほどアシスタントを務めました。その後、スカウティングのダイレクターになりました。今はトップチームの試合に向けた準備、対戦相手の分析を担当しています。もちろん、選手を視察するために、世界中を飛び回るのもメインの仕事です。遠いところですと、ウルグアイのモンテビデオやブラジルなどに行きましたよ。ビッグトーナメントにも行きますし、1年で150試合から200試合は生で観戦しています」

――テクノロジーの発達に伴い、スカウティングの仕方も変わってきましたか?

「そうですね。私がヴォルフスブルクに来た時は、選手のデータバンクがありませんでした。そのデータバンクを作ろうと、とにかくデータをかき集めて、ウチのクラブ独自のものを完成させました。仕事は他にもあります。ウチはフォルクスワーゲンがスポンサーなので、ドイツでいろいろなイベントをしています。そこへの参加も多いです。あとはサッカースクールのコーチやスカウティングのレクチャーもしています」

――1週間のスケジュールは?

「試合のスケジュールで変わります。例えば、チャンピオンズリーグとヨーロッパリーグがあるとき。まず月曜日はスカウティングスタッフとミーティングをします。火、水、木は、チャンピオンズリーグ、UEFAユースリーグ、ヨーロッパリーグの視察。ドイツに戻ってくるのは金曜日で、ここで少し休憩します。そして、土日はブンデスリーの試合やサッカースクール、あちこちでのイベントです。合間を見てレポートも作らなければならない。オフィスワークは、ちょっとつまらないところもある(笑)」

――まとまった休日はなさそうですね。

「日曜に試合があれば、オフは基本的になし。それから私の子供もサッカーをやっていて、ヴォルフスブルクUー15でプレーしています。だから土曜の朝はそれを観に行って、午後はトップチームの試合という感じ。ただ、(ブンデスリーガが中断する)夏と冬は必ず日本に戻って休んでいますよ。奥様が日本人だから、必ず戻らないと(笑)。でも、僕も戻りたいから問題ない。ドイツは今日のように天気がいい日もあるけど……。とにかく僕は日本の文化の方が合っています。食べ物とかも」

――ヴォルフスブルクのスカウティングチームは何人で構成されていますか?

「事務所に常駐しているのは4人。他に元プレーヤーや元コーチなどのスカウトとも連携しています。外注を除く事務所のスタッフ全員で1週間にカバーするのは計30試合ほど。私一人だと4~5試合ですね。今日もUー19とセカンドチームの試合を観に行きます。モンテビデオに行ったときは、10日間で18試合観ました。観ること自体はいいけど、レポートが面倒くさい(笑)。今週はUEFAユースリーグ。準決勝と決勝はスイスで見る予定です。(まだ認知度が高くない)若い選手ばかり観るから、一人ずつのレポートを書かなければならない」

――そのレポートはスポーツダイレクターに提出?

「データバンクに入れます。それをスポーツダイレクターたちが見ます。もし、クラブが興味を持てば、その選手のレポートを計30枚作らなければならない(苦笑)」

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