CSKAモスクワから期限付き移籍で仙台再加入を決めた西村  写真:アフロ
CSKAモスクワから期限付き移籍で仙台再加入を決めた西村  写真:アフロ
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 再開の日は、彼にとって再起の日となるか。西村拓真は自身二度目のベガルタ仙台加入を経て、チームとともに新たなスタートを切ろうとしている。

 1996年10月22日生まれの、23歳。未知の舞台に乗りこむたび、壁に突き当たるたびに、その先のゴールへの道を切り開いてきた男である。

 プロとしてのスタート地点が、仙台の地だった。彼にとって馴染みの薄い場所だったが、2014年の年末にこの地を訪れたことで、杜の都は西村を鍛える場となった。

 富山第一高校3年生当時の西村は、同年12月に仙台の練習に参加した。2年時に全国高校サッカー選手権大会で優勝経験を持つが、3年時には県予選を突破できず。高校卒業後の進路を探る中、仙台の地に辿り着いた。

 当時の仙台は、シーズン途中に就任した渡邉晋監督のもとでチームを立て直し、J1残留を決めたところ。渡邉監督は次季を展望しつつ、練習で荒削りながら好プレーを見せる西村の姿に「ゴールに向かう、ストライカーの動きをしている」と感じ、強化部と相談して獲得を決めた。練習生・西村拓真は、Jリーガー・西村拓真としての契約を勝ち取った。

 こうして2015年にプロ生活をスタートさせた西村は、新加入選手会見の席で「ゴールへの意識と、ペナルティエリア付近でボールを持った時を見てください」とアピール。ゴールに向かう姿勢をまず表したわけだが、この年の最初に目指した“ゴール”は、試合に出場することだった。しかし、チームにけが人が続出した時期のカップ戦でベンチ入りこそしたものの、J1での出場数は0。当時、J3で活動していたJリーグ・アンダー22選抜(J-22)で、実戦経験を積むことが多かった。J初ゴールも、同年J3第25節のY.S.C.C.横浜戦で記録している。

 同年末、西村はスペインでの研修に向かう。12月8日から翌2016年1月19日まで、ムルシア州のラマンガ・クラブ ハイパフォーマンスセンターで、地元スペインはもちろん、カナダやスウェーデンといった多くの国から集まった同世代の選手たちとともにプレー。実戦中心のメニューで鍛えられた。その中で、最も本人の印象に残ったのが「ゴールへの貪欲さを身につけろ」と指導者に何度となく言われたことだったという。日本の練習でもゴールに向かうプレーを見せ続けていたように見える西村だったが、スペインでは、判断のスピードなどとともに、“ゴールへの意欲”を課題として指摘された。ゴールへ向かう意識は、さらに強くなった。  この研修では、それまでほとんどやったことがなかったという1トップでもプレー。そして、「ボールの受け手として、プレーの幅が広がった」と収穫を口にした。海外での不慣れな生活リズムにも適応し、自信を携えての帰国だった。休みはほぼない状態で、チームに合流してキャンプに突入した。

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