後藤健生の「Jリーグ中間報告」(1)横浜FM大苦戦の裏に「日本的守備の熟成」ー仙台と横浜FCの画像
横浜Fマリノス アンジェ・ポステコグルー監督 撮影:中地拓也

再開して第7節がおわった明治安田生命J1は、川崎フロンターレが6連勝で首位を走り、追うガンバ大阪が2位、名古屋グランパスFC東京セレッソ大阪が同勝ち点で3位を争っている。今シーズンの特徴として、中堅どころの組織的な守備は要注目だ。はたして、王者・横浜FMと強豪・鹿島アントラーズはどうしてしまったのか、川崎を止めるのはどこか、シーズンの行方を占う。

 Jリーグが再開されて早くも約1か月が経過した。そこで今回は、Jリーグのここまでを振り返ってみたい。ただ、まだ「総括」などすべき時期ではないので、今回は筆者がスタジアムで観戦したゲームで感じたいくつかのトピックに絞ってご紹介することにしよう。

■王者たちの苦戦 理想と現実のはざまで煩悶する鹿島アントラーズ。横浜FMは対戦相手の「横浜対策」を克服できるのか

 再開後、第7節までで最も驚かされたのは「常勝軍団」鹿島アントラーズと「前年王者」横浜F・マリノスの苦戦ぶりだった。

 鹿島の苦境はある程度は予想できた。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大によってJリーグが中断する前にACLのプレーオフ、YBCルヴァンカップ、そしてJ1開幕戦と公式戦で3連敗を喫していたからだ。

 ザーゴ新監督の下、ポゼッションとビルドアップを重視し、自らアクションを起こすサッカーへの転換を図ったのだが、それがうまくいかなかった。

 無理もない。元日の天皇杯決勝を戦ってヴィッセル神戸に敗れた後、1月末にACLのプレーオフを戦わざるを得なかったため、ごく短いオフを過ごした後、すぐに公式戦(ACLプレーオフ)の準備に時間を割くことになり、その結果、新しいスタイルを落としこむ時間がないまま新シーズンに突入してしまったのだ。

 リーグ戦中断によって時間ができたので立て直せたかと期待したが、やはり合同トレーニング不足のせいか、立て直しはできていなかった。

 今後は、じっくりと時間をかけて新スタイルを追求していくのか、それとも「常勝軍団」の看板を維持するために現実路線に戻って上位進出を目指すのか……。クラブとして決断が求められる。

 一方、横浜F・マリノスも再開後2勝1分3敗と黒星先行になっている。

 たしかに、2月にはヴィッセル神戸と対戦したゼロックス・スーパーカップでPK戦(連続失敗でファンを驚かせた)の末に敗れ、またJ1開幕戦ではガンバ大阪の組織的な守備の前に攻撃を封じられ1対2のスコアで敗れてしまった。だが、横浜が開幕後もこれほど苦戦するとは誰も思っていなかったのではないだろうか。

 アンジェ・ポステコグルー監督が就任して3シーズン目。両サイドバックがインナーラップする超攻撃的サッカーもすっかり定着。昨シーズンの終盤は課題だった守備力も上がっており、完成度は高まっていたはずだった。

 しかし、再開後の横浜FMは勝ちきれない状態が続いている。第6節では4対0というスコアで横浜ダービーを制したが、この試合でも前半は互角の戦いで横浜FCに何度も得点機を作られていた。

 苦戦の原因は、相手チームの「横浜対策」によるものだ。

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