仙台の試合前のウォーミングアップ時に、仙台の4人のDFがラインの上げ下げを確認する光景を目にした。コーチがボールを動かす度に4人がラインを細かく上げ下げするのだ。かつて、フィリップ・トルシエ監督は3人のDFを並ばせてラインの上げ下げの練習をやっていたが、仙台のアップを見ていて僕はそれを思い出した。実際、仙台は最後列だけでなく、すべてのポジションで「選手間の距離を保つこと」がきっちりと意識付けされている。

 横浜FCも同様にしっかりした組織力を保ちながら、MFが献身的な動きで相手MFを追い回してフィルターをかける役割を果たしている。チャレンジに行く選手と、ポジションを保つ選手の役割分担がよくできているのだ。

 仙台は今年から木山隆之監督が指揮を執っている。木山監督はジェフ千葉でも、モンテディオ山形でも、組織的でバランスの取れたチームを作って、ともに昇格プレーオフに導いたことがある。

 一方、横浜FCは昨年から下平隆宏監督が指導しているが、下平監督は柏レイソルで下部組織の監督として多くの若手を育てると同時に、2017年にはトップの監督としてJ1リーグ4位という成績を残したこともある。

 両監督とも、組織的なチームを作って実績を残したことがある優れた指導者なのだ。

 かつて、下位チームは引いて守って一発のカウンターを狙うような戦いをすることが多かったが、今では組織的な守備を構築し、高い位置で相手ボールを奪ってショートカウンターを仕掛けるようなやり方を取り入れるチームが多い。

 今シーズン、Jリーグでいくつかもチームが組織的な守備で強豪を苦しめているのを見ると、ようやく日本にも「守備の文化」が根付いてきたような気がする。

※後編に続く

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