『PROGRESSION』湘南ベルマーレ、「チョウ貴裁サッカー」からの前進の苦しみの画像
湘南ベルマーレ・齊藤未月  写真:長田洋平/アフロスポーツ
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■2020年のスローガンに込められた意味

 湘南ベルマーレの2020年シーズンを思う時、私は古代中国の書物『易経(えききょう)』に書かれるひとつの教えを連想する。「尺蠖(せきかく)の屈するは、以て信(の)びんことを求むるなり」との教えが、チームの戦いぶりに重なるのだ。

 今シーズンの湘南は『PROGRESSION(プログレッション)』をスローガンとしている。昨シーズン途中からチームを指揮する浮嶋敏監督は、1月の新体制発表会見で「我々が標榜してきている湘南スタイルというサッカーを前進させていく」という決意を明らかにした。

 湘南スタイルと呼ばれるサッカーは、2012年から19年途中まで采配を振るったチョウ貴裁監督のもとで花開いたものだ。もっと言えば、Jリーグ参入当初に「湘南の暴れん坊」と呼ばれた攻撃的サッカーにルーツを持ち、上田栄治、菅野将晃、反町康治らの歴代監督が育んできた「勝負に厳しく向き合い、戦う意欲に溢れる」姿勢を土台とする。そこに、チョウ前監督が「試合開始から終了まで走り続ける」、「素早い攻守の切り替え」、「前線から激しいプレスをかけ、なおかつ局面で戦う」といった現代サッカーの構成要素を肉づけしたものだ。

 湘南の選手たちは、とにかく良く走る。何度もスプリントするし、切り替えで相手チームに出遅れない。客観的に見て力が上のチームにも、アグレッシブな戦いを挑んでいく。彼らが見せる胸のすくサッカーは、勝敗を越えた価値を提供するものと言っていい。

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