大住良之の「この世界のコーナーエリアから」 第24回「なければ寂しいもの」の画像
ポルトガル1部・ポルティモネンセSCのユニフォームの胸に輝くカタカナ (公式HPより)

かつて80年代のF1ブームのころ、レーシングチームのシャツやジャンパーを着ていると、「スポンサー料もらっていないのに、ボランティアのチンドン屋か?」とからかわれたものだ。時は移り、サッカーファンはスポンサー名のないサッカーシャツはバッタものと切り捨てる。――キミ、ユニホームに不思議なものがついているよ。

 ■飛んで埼玉発、ポルトガルの片隅行き

 ポルトガル1部のポルティモネンセSCは欧州ではほとんど無名と言っていいが、日本ではわりと知られたクラブである。金崎夢生(現在鳥栖)や中島翔哉(現在FCポルト)がかつてプレーし、現在も日本代表GK権田修一やDF安西幸輝が所属している。かつて浦和でプレーしていたロブソン・ポンテがスポーツ・ディレクターをしている関係からか、日本とのつながりが深く、選手の行き来も多い。

 ことし8月、浦和レッズからこのポルティモネンセに2人の選手が期限付き移籍した。DFマウリシオとFWファブリシオ。ともにブラジル人だが、浦和に移籍する前にはポルティモネンセの選手だったことがある。その2人の移籍記者会見をネットで見て驚いた。ポルトガル最南端、ファロ地方の人口5万6000人の保養地のクラブのユニホームの胸に、「セレモニー」というカタカナがあったのだ。

「セレモニー」は埼玉県内で葬儀場や結婚式場を運営する会社で、現在も浦和レッズの高いカテゴリーのスポンサー企業である。しかし日本の「全国区」とも言えない企業が、巡り巡ってなぜ欧州大陸の地の果てに近い町のクラブの「胸スポンサー」になったのか。何か大航海時代を思わせるようなロマンまで感じさせる話である。

 ユニホーム広告は今日のプロスポーツでは欠かすことができない要素だ。プロ野球のように断固ユニホームに広告をつけさせない団体もあるが、サッカーでは、プロに限らず、アマチュアでも胸に堂々とスポンサー名を入れてプレーしている。日本サッカー協会の「ユニホーム規定」には「広告」についての規則があり、大きさや入れていい場所などが詳細に決められている。規定に沿って申請すれば、アマチュアでも許可が出る。

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