「川崎フロンターレはパス・サッカーの究極形である」スポーツ比較解剖学(3)重要なカギは「意識づけ」の画像
盤石すぎる戦いを続ける川崎フロンターレ 写真・中地拓也

※第2回はこちらから

パスをつなぎ、シュートを放って、相手ゴールを陥れるスポーツ――水球、バスケット、ハンドボール、アイスホッケーを、パスを主体に考察して、比較を試みた。それをサッカーに当てはめると、川崎フロンターレはなぜ強いのか、その理由が見えてきた。

■コースや速度を高度に意識したパス回し

 つまり、川崎のあの特徴的なパス回し。ゆっくりとしたショートパスをやり取りする時に、川崎の選手たちは「受け手の右足の前方」とか「左足の横」といったように、非常にピンポイントでパスのコースや速度を意識しているはずだ。だからこそ、大きな走りを入れずにいくらでもパスがつながるのだ。試合前のウォーミングアップ時に、彼らのパスのやり取りを見ていても、川崎の選手たちはそのあたりの意識を極めて高く保って、しっかりと狙ったパスを通していることが分かる。

 その意識が、ロングパスの場合でもしっかりと保たれているのだ。

「カウンターだ!」となると、かなりアバウトなキックを蹴ってしまうことが多い。

 逆サイドにフリーの味方がいるのなら、一瞬でも早く、相手のDFがスペースを消す前にパスを送り込む必要がある。しかも、フリーのスペースならパスが多少アバウトなものであったとしても、受け手がしっかりと走ればパスはつながる。

■受け手の姿勢が得点率を決める

 だが、それでは、たとえパスがつながったとしても、ボールを追ったためにパスを受けるべき位置がタッチラインに近すぎたとか、パスを受けるために後ろ向きで走らざるを得ず、追いついた時には体が後方を向いていたといった理由で得点の確率は下がってしまう。

 だが、川崎がロングカウンターで得点を決めた場面を見ると、ロングパスがきわめて正確にフリーの味方に渡っていることが分かる。パスを受けた瞬間に前を(ゴールの方向を)向いてボールが収まるわけである。だから、そのまま自分で決めるにせよ、浦和戦の3点目のようにさらに逆サイドを使うにしても、ボールを受けてから時間を浪費せずに次のプレーに移れるわけだ。

 川崎がひたすら磨いてきたショートパス。そこで、常にパスのコースやスピードを考えてパスを出すという意識が高くなっているから(そして、それをロングパスにも適応しているから)、川崎のロングパスは誰もがきわめて正確なのだろう。

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