久保のヘタフェ移籍に際しては、スペインメディアでも見解が分かれていた。『マルカ』紙が久保加入で布陣変更の可能性があると説けば、一方で『アス』紙では「久保にとって簡単な移籍ではない」と断ずる。一体どっちなのだ、と突っ込みを入れたくなった。

 裏を返せば、それだけ久保に対する評価が分かれ始めていた。ビジャレアルでは、ヨーロッパリーグで試合に出て、リーガエスパニョーラではベンチ要員として扱われていた。当然、久保の中で期するものがあっただろう。

 そして、それがデビュー戦の活躍につながった。リーガエスパニョーラ第18節エルチェ戦で、久保は躍動した。64分から出場して、久保のミドルシュートからハイメ・マタの決勝点が生まれた。3点目のPKを誘発するクロスを送り、チームメートから手厚い祝福を受けた。

「クボとは数日前から話をしてきた。難しい状況でマドリードに到着して、自宅で周囲から隔離されなければいけなかった。我々のチームについて、またピッチ上のどこで貢献してもらいたいか、そういった話をしていた。(デビュー戦の当日に)ホテルで試合に出た時の役割を彼に説明した。素晴らしいプレーをしてくれたと思う。2得点に絡む活躍だったんだ」

 これはエルチェ戦後のホセ・ボルダラス監督の言葉だ。

 守備を重視する指揮官だが、久保とカルレス・アレニャの加入で布陣変更を断行している。従来の【4-4-2】を捨て、【4-2-3-1】を選択。そのなかで、久保が右サイドで、アレニャがトップ下で好パフォーマンスを披露した。

「クボとアレニャの加入でヘタフェに新たなストーリー」(『マルカ』)、「到着直後のクボがヘタフェを活性化」(『エル・パイス』)、「クボ、希望を抱かせる25分」(『アス』)とスペインメディアはデビュー戦の久保を称賛している。

 久保のヘタフェでの挑戦は始まったばかりだ。ビジャレアルで抱いた悔しい思いをバネに、彼は再び飛躍を目指す。忘れそうになるが、まだ19歳。開かれたキャリアが、そこにはある。

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