【指揮官の肖像】ジョゼップ・グアルディオラ「世界を変えても、決して満足しない指揮者」の画像
ジョゼップ・グアルディオラ 撮影/渡辺航滋

 彼の出現で世界のパワーバランスは変わってしまった。

 ジョゼップ・グアルディオラ監督がバルセロナの指揮官ポストに就いたのは2008年だった。Bチームから昇任する形で、彼がトップを率いるという決断が下された。

 2007-08シーズンを無冠で終えていたチームを立て直すため、グアルディオラは就任当初から積極的に動いた。ロナウジーニョ、デコ、長年の主力選手に見切りをつけ、リオネル・メッシ、シャビ・エルナンデス、アンドレス・イニエスタを中心に据えようと決めた。彼は賭けに勝利して、4年間で実に14個のタイトルを獲得した。

■希代の戦術家

 グアルディオラは希代の戦術家だ。

 バルセロナ時代には、メッシのファルソ・ヌエベ(偽背番号9/ゼロトップ)を発明した。メッシの得点力を爆発させ、チームを栄光に導いた。グアルディオラに出会っていなければ、メッシは技術の高いドリブラーとしてキャリアを終えていただろう。

 バイエルン・ミュンヘンでは、フィリップ・ラームをアンカー起用して周囲を驚かせた。世界最高峰のサイドバックとして名を馳せていたラームをコンバートして、なおかつ彼の新たな才能を引き出した。

 シティでは、バイエルンで原型を構想した偽サイドバックをより具体化させ、さらに偽センターバックを使いながらビルドアップから中盤の数的優位メイクへの流れを容易にした。

 ただ、ボール保持に異常なまでの拘りを見せるグアルディオラだが、俗に言うチキ・タカ(パスを回すフットボール)を嫌悪している。パスを繋ぐためのパスは彼の中でご法度だ。その根底には、ゴールという目的に向かってポゼッションしなければ意味がないという考えがある。

 一方で、彼には考え過ぎて失敗してしまうようなところがある。

 「グアルディオラは若かった。経験を積んでいる過程だった。時々、彼はしゃべり過ぎだと思った。本来、フットボールはシンプルなものだ」とはバイエルンで指導を受けたフランク・リベリの言葉だ。

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