チェルシーやマン・Cに似る手法

 こうした手法を取るビッグクラブが他にある。日本ではなく、ヨーロッパでの話だ。例えば、イングランドのチェルシー。プレミアリーグ6度の優勝を誇る強豪のクラブ公式サイトを見ると、32人の選手がローン移籍中であることが分かる。

 横浜FMも属するシティ・フットボール・クラブの筆頭である、マンチェスター・シティも同様だ。中東マネーを背景として一気に世界最高峰に躍り出たクラブは、17人を期限付きという形で他クラブにてプレーさせている。ビザの関係もあり、完全移籍で買い取られて即、他国のリーグに出された板倉滉食野亮太郎も、その中に含まれる。オープンになってはいないものの、表面上は他クラブが買い取ったように見せ、そのクラブでプレーする「お試し期間」で眼鏡に適えば、晴れて正式に移籍獲得という形で迎え入れるクラブもあるという。

 どこのリーグ、どんな形式であれ、若い時期にプレー時間を得ることは重要だ。一方で、プロにとってはプレーしている時間は自身の価値がはっきりと露呈される場でもある。昨年の横浜FMユースからの昇格直後にカマタマーレ讃岐へ期限付き移籍したブラウンノア賢信は1年後、トップチームのユニフォームに袖を通すことなく水戸ホーリーホックへ完全移籍することとなった。

 2019年に久々のJ1制覇を果たすまで、横浜FMは試行錯誤してきた。若手育成を新たな方針として打ち出したかと思えば、ベテラン中心の補強に舵を切ることもあった。近年では、提携したシティ・フットボール・グループのラインで、優秀な外国人選手を獲得するようになった。さらにはJ2など下部リーグで戦う優秀な選手でのお得な補強という独自の手法も、15年ぶりのリーグ優勝に一役買った。

 連覇を目指した昨季開幕前には、J2クラブからを中心とした即戦力を補強。シーズン途中にはGKの入れ替えや、柏レイソルで埋もれていたジュニオール・サントス獲得など大胆な手を打ったが、最終的には9位に終わった。

 今回挑戦する期限付き移籍の積極活用は、どのような成果をもたらすのか。プロである以上、クラブも結果をもって正しさを証明しなければならない。

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