■キング・ペレの1000ゴール目はPKで

 サッカーのゴールは、幅7.32メートル、高さ2.44メートル。そこから11メートル離れたペナルティースポットからは、ゴールの幅は37度、高さは13度の角度がある。自信をもって思ったところにけり込むことさえできれば、得点は簡単だ。しかし自信がなく、迷うと、とたんにGKが大きく、ゴールが小さく感じられてしまう。1986年のワールドカップでは、ジーコもPKを失敗した。

「サッカーの王様」と呼ばれたペレでさえ、PKのときには緊張した。1969年11月19日、プロとして通算1000ゴール目にあと1点に迫っていたペレは、サントスFCの一員としてリオデジャネイロのマラカナン・スタジアムでバスコダガマ戦を戦った。そして1-1で迎えた後半30分に自分自身へのファウルでPKを得る。「1000点目は流れのなかのプレーから決めたい」と思っていたペレはチームメートに任せようするが、スタジアムを埋めた7万5000人の観衆から「ペレ、ペーレ!」の大合唱が起こり、自らけることを決断する。

 ボールをセットし、助走の距離をとるペレ。このとき、彼の頭には、「失敗したらどうしよう」という不安が渦巻いていた。ゴール裏には、この歴史的な瞬間を撮ろうと、何十人ものカメラマンが二重、三重に重なるようにカメラを構えている。ペレの目には、灰色のシャツを着たバスコダガマのGKアンドラージがとても大きく見えた。

「でも気がついたら体が勝手に動いて、ボールをけっていた」

 後にペレはそう回想している。彼はリラックスした姿勢から右足のインサイドキックでゴールの右にボールをけった。アンドラージが反応し、懸命にジャンプしたが、その指先をかすめ、ボールはネットに吸い込まれた。

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