大住良之の「この世界のコーナーエリアから」 連載第46回「スタジアムへは歩いてGO!」の画像
目指すはウェンブリーの大きなアーチ。地下鉄「ウェンブリー・パーク駅」を出ると、スタジアムまでまっすぐ、広い歩道が続いている。(c)Y.Osumi
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春の声が聞こえてきた。新シーズンの始まりだ。きっと今年は、巣ごもりから脱出して、サッカー観戦三昧を再開できるだろう。スタジアム近くの桜の木との再会も待ち遠しい。だから、スタジムへは歩いてGO!だ。

■遥かかなたのスタジアム

 2018年ワールドカップでロシアに滞在した35日間、私の総歩数は57万203だった。1日平均1万6292歩。毎日約10キロ歩き、35日間で東京から東海道伝いに名古屋あたりまで歩いたことになる。本当だろうか。

 何をいまさらと言われそうだが、スマホはとてつもなく便利だ。頼みもしないのに、勝手に毎日の歩行数をカウントして、記録してくれているということを、私はつい最近発見した。このスマホを買ってからいちばんよく歩いたのは間違いなく2018年ワールドカップ・ロシア大会の時期に違いないと、2年半も前の記録があるか調べたら、きちんと残っていた。便利だが、少し怖い。

 なぜこんなに歩かなければならなかったのか。それは、スタジアムに行くのに歩く以外になかったからだ。最寄り駅から近くても15分から20分は歩く。そしてスタジアムの近くに着いても、メディア用の入り口に行くために、ぐるりと半周しなければならないことも少なくない。近年の大きな大会では、スタジアム周辺には広大な「セキュリティーエリア」が設けられているから、目の前50メートルのところに見えている入り口にたどり着くのに、500メートルも遠回りしなければならないことも珍しくない。

 このような大会では、たいてい「メディアシャトル」というサービスがある。メディア用に指定された市内のホテルから1時間に1本程度バスが出て、スタジアムの中まで運んでくれるのだから、これほど便利なものはない。メディア用のホテルは、私の基準からすれば少し高価なので、そのホテルから歩いて数分のあたりに安宿をとり、時間に遅れないようにメディアホテルに行って涼しい顔をしてシャトルに乗り込むというのが賢い方法である。

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