ミラノ・ダービーで蘇る「サンシーロ」の記憶(3)新旧構造が一体となった壮大なスタジアムの画像
サン・シーロでゴールを決めたラウタロ・マルティネス(インテル) 写真:AFP/アフロ

※第2回はこちらから

ミラノ・ダービーが帰ってきた。ACミランインテル、スタディオ・ジュゼッペ・メアッツァを本拠地とする両クラブが、スクデットを懸けて相対したのは10年ぶりのこととなる。かつてセリエAは世界最強リーグと謳われて、日本でも絶大な人気を誇っていた。変わらない「サンシーロ」の壮麗な姿は、あの時代の復活を予言しているのだろうか。

■サンシーロスタジアムの凄さ

 初めて見た「サンシーロ」は本当に壮観だった。

 完成当時は長方形の何の変哲もないスタジアムだったのだが、1955年に2階席が増設された時に取り付けられた19本の螺旋状のスロープによって、「サンシーロ」は他に類例のない特異なデザインのスタジアムとなった。観客は入場ゲートから2階席までは、このスロープを上がっていくのだ。

 その後、1990年のイタリア・ワールドカップを前に「サンシーロ」では大規模な改装が行われ、2階席の外側に3階席が取り付けられた。3階席を支えるために11本のタワーが建設され、4つのコーナーのタワーは他のタワーより太くて高く、そこに鋼鉄製の重厚な桁が架けられて屋根が取り付けられたのだ(雨が多いロンバルディア地方であるにも関わらず、それまでこのスタジアムには屋根はなかった)。そして、それぞれのタワーにはそれまでと同じ角度のスロープが取り付けられ、全体のデザインが統一されたものになっている。機能性とデザイン性を兼ね備え、「さすが、ファッションの街ミラノだけはある」とうならされてしまう素晴らしい設計だ。

 だが、実はメインスタンドやバックスタンドの1階部分には今も1925年に建造された当時そのままの古い構造も残っているのだ。

 実際、メインスタンド側のメディア用入口から入って記者控室などに向かって階段を上っていくと、古いレンガ造りの階段や木製の扉など年代を感じさせるような構造がむき出しになっている。古い構造とモダンな大屋根が一体となっているあたりが、何とも味のあるスタジアムなのだ。

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