大住良之の「この世界のコーナーエリアから」 連載第48回「サッカーピッチは花ざかり」(前編)の画像
選手たちの色とりどりのシューズ 撮影/中地拓也

職業によっては仕事中の制服着用はマストとなる。サッカー選手のドレスコードは、首から下はみんな一緒。唯一、個性を出せるのが、赤、白、黄色……の足元だ。

■秘儀・オフサイド回避

 Jリーグの開幕節、浦和レッズがいきなり見事な攻めを見せ、MF小泉佳穂のスルーパスで抜け出したFW杉本健勇が見事なシュートをFC東京のゴールに突き刺した。私には杉本がオフサイドのように見えたが、副審の旗は上がらなかった。だがもちろんビデオ・アシスタントレフェリー(VAR)がはいる。チェックの結果、杉本がわずかに出ていたことが判明し、得点は認められなかった。

 たしかに、小泉がボールに触れた瞬間の映像を止めて最後尾のDFのところでラインを引くと、杉本の白いシューズのつま先が5センチほど出ているのがわかった。その映像を見ながらひらめいたのは、「FWは緑色のシューズをはくべきだ」ということだった。緑のシューズなら、ラインを引かれても、ああまではっきりとはわからないだろう……。

 そんな話をしていたら、「たしかプーマには芝生の柄のシューズがあったはずだ」と友人が言う。調べてみたら、たしかにあった。2016年に税込み2万7000円で発売された「エヴォスピードSL GRASS」というモデルで、何と3Dプリントデザインで、3Dメガネを使うと芝が立体的に見えるという。でも、3Dメガネをかけてサッカーの試合を見る人なんているんだろうか。

 ともかく、現代のサッカーシューズは「何でもあり」だ。さまざなまなスポーツに並々ならぬ情熱を抱いている私の友人は、「サッカー選手はなぜあんなにばらばらな色のシューズをはいているのか。あれがいやだ」と言う。同じプロスポーツでも、プロ野球ではシューズのデザインもユニホームの一部になっているようで、チームでおそろいのものをはいている。しかしサッカーでは、シューズは選手それぞれがメーカーと契約し、用意するもの。メーカーだけでなく、色もデザインも、ほとんど自由なのである。

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