大住良之の「この世界のコーナーエリアから」 連載第50回「私が『女子サッカーの敵』になった理由」の画像
「女子サッカーの敵」転じて「女子サッカーの監督」となる。チームにはいってみると、わたしは女子選手たちのフェアな態度や取り組む姿勢、何よりも、どんなに苦しくてもやるべきことをやり抜こうというモラルの高さに魅せられた。(印南英雄氏提供)(c)H.Innami
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ジェームズ・キャグニー主演の「民衆の敵」という超有名なアメリカ映画があった。1931年製作で原題は「The Public Enemy」。今回は「女子サッカーの敵」と断罪されたある男の告白だ。キャグニー扮するギャングは最後に銃殺されたが、果たして、男の汚名は返上となったのか――。

日本代表選手からの断罪

 私はかつて「女子サッカーの敵」とののしられた。

 たしか1981年ごろのことだった。『サッカー・マガジン』編集部のチームと、フリーランスのカメラマンチームが試合をすることになった。当時5人ほどしかいなかった編集部では足りないから、元編集長や社内の他の編集部員、さらには友人まで引っぱってきて、なんとか11人を集めた。ユニホームは高校サッカーのTシャツ。それに背番号をつけて用意した。

 試合前日、カメラマンの今井恭司さんがカメラマンチームに女子選手をひとり入れるけどいいかなと電話してきた。女性カメラマンというわけではない。しかしただの女子選手でもなかった。日本代表経験のある選手である。

「う~ん。できればやめてほしい」。私はそう答えた。「女性とサッカーをするのはいやなんだ」

 結局、その女子選手は試合に訪れ、最初は主審をしてくれていたが、その後で少しプレーした。

 だが試合後、その選手は私と口をきいてくれなかった。後日、「大住さんは女子サッカーの敵」と言われた。

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