五輪仕様の「なでしこジャパン」全貌(2)浦和とベレーザの違いとは?の画像
21歳の大型CB・宝田沙織  撮影/原壮史

※第1回はこちらから

圧勝したパラグアイ、パナマ戦の2試合を分析すると、東京オリンピックに向かう女子代表の全貌が見えてきた。そして、そこには、「WEリーグ」発足前夜の日本女子サッカーの新しいトレンドに呼応する変化があった。再び世界で戴冠するために、“なでしこジャパン”が見据える未来とは――。

■スピードとフィジカル面の新境地

 そのほか、とくにパラグアイ戦で目についたのが、速い攻撃を仕掛けようとしていたことだ。パススピードや展開のスピードが、これまでの女子代表の試合と比べて明らかに速かった。

 2011年の女子ワールドカップで優勝した当時、なでしこジャパンは世界から「バルセロナのようなサッカー」と賞賛された。

 ワンタッチ、ツータッチでテクニカルなパスをつないでビルドアップするサッカーは女子サッカーの世界に新風を吹き込んだのだ。それまで、女子サッカーという競技は、どちらかといえばフィジカル勝負の要素が濃かった。アスリート能力の高い女性が数多くサッカーをプレーするアメリカが圧倒的だったのも、フィジカル能力の高さのおかげだったし、ヨーロッパ勢もやはりフィジカルの部分で対抗しようとしていた。

 だが、日本が新しいパスサッカーで新風を吹き込んだことによって、世界の強豪国の取り組み方も大きく変わり、女子サッカーは大きく発展した。

 ただ、その結果として、日本も簡単には勝てなくなってしまった。

 対戦相手が日本のストロングポイントであるパス・サッカーを取り入れた結果、日本もそれだけを武器にしていたのでは勝てなくなり、ここ数年は欧米の強豪国相手にはフィジカルやスピードで劣る分、劣勢を強いられる時代が続いていた。日本が再び世界の頂点を目指すためには、日本の良さ=パス・サッカーの精度を高めると同時に、スピード勝負やフィジカル勝負でも対等に戦えるようにしていかなければならないのだ。

 そこで、高倉麻子監督は将来を見据えてなでしこジャパンに、スピードやフィジカルの面を植え付けようとしているのだ。

 今回のパラグアイとパナマ相手の親善試合に向けて高倉監督は25人の選手を招集した。すでにオリンピックに向けてメンバーはだいぶ固まってきているものの、将来のために若い選手にも経験を積ませようとしているのだ。そして、招集された若手選手の中には身長が160センチ台のサイズのある選手が多数含まれていた。

 たとえば、今回、DFで起用されて注目された20歳の宝田沙織は身長が170センチある。同じく若手DFですでに代表経験も多い南も21歳で、こちらは身長172センチだから、CBの2人はともに170センチ以上ということになる。

 高倉監督は「意図してサイズのある選手を選んだのではない。育成の努力の結果、大きな選手が育っている」と語るが、将来的にはそうした大型の選手を使って、同時にスピードを求めていこうというのだろう。

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