文と写真・下川裕治 

 

 昨年(2020年)の夏以降、ヨーロッパは観光客を受け入れる規制を緩和し、日本政府が発表する感染症危険度はレベル3、つまり「渡航中止勧告」という渡航環境が続いた。

 それが動きはじめたのは、10月30日だった。政府は、感染者数が少ない国のレベルを引きさげた。タイはレベル2になった。ヨーロッパや中東では、ヨルダンがレベル2だった。レベル2は、「不要不急の渡航は止めてください」である。

 タイはレベル2になったが、観光客を受け入れているわけではなかった。労働ビザをもっていることが条件だった。

 

「ヨルダンかな」

 深夜、パソコンに向かいなから呟くことになる。航空券を調べると、エミレイツ航空やカタール航空が就航していた。往復で10万円ほどだった。

 ヨルダンには縁があった。昔、イラクで殺害された香田証生さんの足跡を追って滞在した。そのときはイスラエルから入国したが、面白い国だと思った。

 12月に入ったら行こうか……などと考えているうちに、ヨルダンの感染症危険度がレベル3になってしまった。

 感染症危険度レベルを、旅に出る基準にしたわけではなかった。しかし世界の国々は、共通したガイドラインをもってはいなかった。最終的には自分で感染を防ぐしかない状況だった。海外への旅でいえば、「訪ねる国にウイルスをもち込まず」、「日本にももち込まない」という2点だった。そのための判断基準が感染症危険度レベルだった。

 状況をみてみると、レベル2の国は、日本よりはるかに感染者数が少なかった。可能性という面でいえば、日本にいるより感染する割合は少ない。つまり、日本にウイルスをもち込む可能性は低かった。

 あとはもう1点、「訪ねる国にウイルスをもち込まない」ことだった。

 

 ヨルダンの危険度レベルが3にあがり、さて……というときに、タイから情報が入った。観光客も受け入れるというものだった。アジアの国々のなかには危険度レベルが2の国はいくつかあったが、どこも観光客の入国は許可されていなかった。その点では、タイは観光客まで規制を緩和したが、そこには条件があった。