台湾の先住民のなかにはキリスト教徒がとても多い。スマンガスも例に漏れず、村の中心部に小さな手作りの木造教会が建っている。

 台湾の先住民たちは、中国大陸から漢民族が移民してきた頃から、徐々に山で暮らすようになったと言われている。16ある部族のなかには、海や島を生活拠点とする人々もいるが、多くが台湾本島の山岳地帯で暮らしている。そんな彼らのなかには台湾の標準語である北京語(台湾華語)を話せない人もいる。

 だが、戦前には日本人が山奥や離島まで分け入り、先住民たちに日本語を教育した。もちろん、たび重なる抵抗はあったが、日本語を流暢に話す先住民も大勢いた。そして、戦後になると今度はキリスト教が流入した。日本人もキリスト教布教者も、教育や物資を提供しながら、先住民たちの心をつかもうとしたのかもしれない。

taiwan126.4
スマンガスにある教会と学校。彼らは独自のガガという掟に基づき生活をしているが、敬虔なキリスト教徒でもある

 


■専任制と相互扶助精神


 集落の人たちは同じもの分かち合って食べ、仕事も持ち回りでこなす。でも、特定の人にしかできない役割もある。たとえば、狩りをする、機織りをする、観光ガイドをする、など、特別な技術を要する仕事だ。この集落のなかで、クマ狩りが許されているのはある一家だけだ。世襲制である。クマ狩りをする家の前には、それを示す看板が掲げられる。

 一方で、機織りをするのは村一番の高齢のおばあちゃんをはじめとする女性たち。先住民は、部族によってモチーフとなる柄が異なる。ここスマンガスのタイヤル族も、自分たちの伝統の色や柄を小物や服に織り込んでいく。タイヤル族の人たちはまじめで勤勉だといわれる。そして、長いこと外界と閉ざされてきたため、仲間どうし助け合うことを何より大切にしている。

taiwan126.5
色鮮やかな糸で先住民の服や雑貨を織るウパハさん。とても勉強家で高齢になってから大学で日本語や北京語を学んだ


色鮮やかな糸で先住民の服や雑貨を織るウパハさん。とても勉強家で高齢になってから大学で日本語や北京語を学んだ


 リモートが当たり前になり、スマホやタブレットを手放せなくなる昨今。生活が便利になるのと引き換えに、人と触れ合う機会を失っているような気がする。ユートピアの人々と火を囲んで飲んだり話したりができる日が待ち遠しい。

 次回(後編)はスマンガスの神木群への旅を振り返る。

(続く)

*本連載は月2回(第1週&第3週金曜日)配信予定です。次回もお楽しみに!

 

taiwanshoei1
『台湾一周‼ 途中下車、美味しい旅』(双葉文庫) 著:光瀬憲子 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

台湾の美味しい調味料 台湾醤
台湾の美味しい調味料 台湾醤

「眺めて楽しい台湾食文化の本」第二弾です。テーマは中華系料理に欠かせないペースト状の調味料である「醤(ジャン)」。30個の食材をもとに、醤を手作りする方法や醤を使ったレシピをグラフィカルに解説。台湾食文化のエッセンスを暮らしに取り入れれば、おうち時間が少しだけ充実するはず。(翔泳社 刊)

 

紀行エッセイガイド好評発売中!!

taiwanshoei2
台湾一周!
安旨食堂の旅
taiwanshoei3
台湾縦断!人情食堂と美景の旅
taiwanshoei4
台湾の人情食堂
こだわりグルメ旅
taiwanshoei5
台湾グルメ350品! 食べ歩き事典