文/チョン・ウンスク


 コンテナと聞いて釜山を思い出す人がいたら、その人はかなりの韓国リピーターだ。

 釜山は世界でも屈指の貨物取扱量を誇る国際港なので、船のターミナルのある旧市街には至るところに輸送用コンテナが積み上げられている。青や茶色の現役コンテナは世界中を旅しているが、今回取り上げるのは貨物としての役目を終え、第二の人生(?)を送っているコンテナたちだ。

 

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釜山港に積み上げられた輸送用コンテナ。大阪行きフェリーの甲板から撮影


■飲み屋に、事務所に、アートに。用途は多彩


 観光地ではなく、庶民の生活圏を歩くのが好きな人は、韓国ではコンテナの再利用が多いことにお気づきのはずだ。

 釜山で私が一時期ハマっていた、タコ丸ごと一匹の主菜で飲ませる店が、まさにコンテナ店舗だった。密を避ける今でこそコンテナは敬遠されがちだが、内部の高さと横幅が約2・4メートル、奥行き6メートル弱の空間は意外と居心地がいい。狭い=窮屈とは限らないのだ。

 私の日本の知り合いには北海道をドライブしていると具合が悪くなるという人がいる。広過ぎて落ち着かないのだそうだ。その人はもちろん路地裏とネオンがないと生きていけない人である。この1年、不自由なときを過ごしているはずで同情を禁じ得ない。

 

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釜山南区の大淵3洞にあった「テナムポチャ」の店舗は、
コンテナとプレハブ小屋(左端)を組み合わせてできていた
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「テナムポチャ」の店内。この狭さが隣席との一体感を生み、
なんともいえない居心地のよさがあった
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この茹でダコが「テナムポチャ」の目玉料理。詳細は拙著
『うまい、安い、あったかい 韓国の人情食堂』(双葉文庫)で

 

 近刊『旅と酒とコリアシネマ』にも書いたが、コンテナが登場する映画でまず思い出すのが、キム・ユンソク主演の『チェイサー』(2008年)と『亀、走る』(2009年)だ。

『チェイサー』では警察の的外れな捜査の対象になっていた石材店の事務所がコンテナだった。堅気の職業だが、壁にヌードポスターが貼ってあり、そこに幼稚な落書きでしてあるあたり、いかにもという感じだった。

『亀、走る』ではガラのよくない運送業者の事務所がコンテナだった。従業員が茶房アガシ(接待嬢)をはべらせてカードゲームに興じたり、脱獄犯が現金を強奪したりする舞台としてコンテナが使われた。

 後日、刑事の張り込み場所として使われたコンテナは脱獄犯が運転する大型トラックに追突され、傾斜地を転げ落ちる。刑事たちは負傷したが、コンテナに大きな損壊はなかった。

 コンテナはけっして二枚目ではないが、タフである。日本の俳優で言えば菅原文太、韓国の俳優で言えばユ・ヘジンだろうか。

 

■注目のドラマ『ヴィンチェンツォ』にも、コンテナが登場


 ソウルの街が十年前と比べるとずいぶんあか抜けしたように、コンテナにも転機が訪れている。

 ソウル東部の「建大入口」駅の近くにできたショッピングモール「コモングラウンド」は、なんとコンテナをパズルのように組み合わせてできている。青で統一されたコンテナが織りなす幾何学模様はアートそのものだ。

 

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地下鉄2号線「建大入口」駅の西側にある「コモングラウンド」。カフェやレストラン、ショッピングモールなど構成要素のほとんどがコンテナでできている 写真:ソウル観光財団


 日本でも注目されているドラマ『ヴィンチェンツォ』では、主人公(ソン・ジュンギ)とホン弁護士(ユ・ジェミョン)がホットドックを食べるシーンがここで撮影された。日本の人の訪韓が解禁されたら、人気スポットになりそうだ。


(つづく)

 

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