■楽遊、休館す

 4月に入り世界の感染者は100万人を超え、日本は49カ国の入国を拒否。ニュースでは安倍総理がマスクを配ると言っていたが、欲しいのはお客と金だ。

 ま、文句を言っていてもはじまらない。

 別邸を預かった我々がまずとりかかったのは大掃除。新築の木造建築からはハウスダスト(というか木くずや土ボコリ)がかなり出る。作業マニュアルを作る必要もあるので、新しいバイトスタッフのトレーニングも兼ねて、毎日、所要時間を計りながら別邸の掃除をした。

 そういや、創業したときこんな感じだったっけ。お客はいなかったが、毎日、掃除していた。

 なつかしいな。4年、早かったな。

 モップを振り回しながらそんなことを思っていたが、我にかえればそんな事態ではない。

 毎日届くテレビ、冷蔵庫、金庫、倉庫の棚、ドライヤー、その他もろもろの梱包をはがし、棚を組み立て、段ボールをつぶし、部屋に運びこみ、掃除をする……のだが、ときどき立ち止まっては「わーっ!!!!」と叫びたくなった。

 こんなこといま頑張って、何になるのだ。

 いかんいかん。

 柄にもなくネガティブおばけに一瞬つかまりかかっては、また渾身の力を込めて段ボールを叩き潰すのだった。

MACHIYA28.7
4月2日。まだ絶賛工事中である。外壁を仕上げているところ
MACHIYA28.8
スタッフは連日備品を片付けたり布団を整理したり、あとは掃除

 


 4月7日、7都道府県で緊急事態宣言。

 京都にも間もなく緊急事態宣言が出されるという予測から、周辺は慌ただしさをました。

「明日からお店閉めることになったので、今日中に来ていただけますか」

 花入れの取り置きをお願いしていた店から電話がかかってきた。途中、京都駅の伊勢丹地下に立ち寄ったら、明日から休業だとかで食品の棚はがらんとしていた。宿に戻ると、リネン業者の配達のおじさんがいた。

「あれ? 今日頼んでないですよね」

「最後なんでご挨拶をと思いまして」

 なんと。

 注文忘れや枚数間違いなど、なにかとミスの多い我々の仕事をいつも気を利かせてカバーしてくれている人だった。だがコロナ禍の影響は免れず、所属していた派遣会社が業者と契約終了となったのだという。

「お互い元気で生き延びましょう」

 何度も口にしたそんな言葉で、一礼してお別れした。


 4月15日、もろもろの作業が一段落し、楽遊は休館となった。仏光寺東町店はひと足先に閉めていたので、これで全館、5月末まで休業である。

 やれやれ、なんとか休館できた。

 なんとか、ってのも変だが、世の中的には休館させる必要があったものの、別邸の準備もする必要があり、閉められないまま来てしまった。これでスタッフのみんなを自宅待機させられる。助成金がどこまで頼れるか分からないし、彼らの生活の心配は残るが、少なくともここで感染させることはなくなり、ひとつ、心配が減った。

「生き延びて6月に会おうね!」

 また同じことを口々に言い合って、お別れした。

MACHIYA28.9
4月15日、閉館する日は造園作業がたけなわ。この模様は回を改めて詳しくご紹介しよう