■人気の旅館にランクイン!


 全国に緊急事態宣言が出されたこの日から、私はぼっち作業へと移った。

 大部分の工事は終わったが、造園や内部の細かい造作、Wi-Fi工事や行政による設備点検など外部との仕事はまだ残っていたし、新たな館内ファイルの作成やWebリニューアル、写真撮影、自分の確定申告などやることは意外といっぱいある。

 毎朝楽遊に来てのれんを出し電気をつけ、

「おはよう!」

 と楽遊に言ってみて(←寂しい)からコーヒーを淹れ、ロビーの大テーブルでひとり作業するのが日課になった。お昼は、庭を眺めながらご近所の名店がはじめたテイクアウトのお弁当を食べたり、錦市場で大量に売れ残っていたタケノコで炊き込みご飯をつくり、それをおにぎりにして頬張ったり。できたばっかりの美しい庭は葉っぱもいっぱい落ちるし、けっこう気を遣う。でも、時間に追われない日常も久しぶりだ。

 まあ、こんな人生の時間も少しならアリかもねえ。

 ホースで庭に水を撒きながらぼんやり思っていたら、4月27日、「WBFホテル&リゾーツ」が民事再生法の適用を申請したという報道が出た。倒産だ。

 わああ。

 ぼんやりしてたのが目が覚めた。

「WBF」といえば、楽遊を挟むように2軒建つ中規模ホテルだ。そのうち1軒は今年3月、コロナ禍の最中に開業したばかり。多分ほとんど使われていないまま閉業だ。

 両脇のホテルが2軒つぶれたから、オセロみたいに真ん中の楽遊もつぶれちゃったりなんかして。

 あはは。

 あははじゃねえよ。

 びっくりしてとりあえずひとりで冗談を言ってみたが、笑ってる場合じゃない。


 そして翌日。

 トリップアドバイザー恒例のランキング「外国人に人気の日本の旅館」が発表され、「京町家 楽遊 堀川五条」は4年連続ランクインで今年は全国2位、「京町家 楽遊 仏光寺東町」は初登場で全国11位にランクイン。

 気まずい……。

 タイミング的に気まずい……。

 もちろんありがたく嬉しいのだが、今の時点だと、

「まあ人気があっても誰も来れないけどな!」

 と謎の逆ギレを起こしてしまいそう。

 いや、素直に喜ぶべきだ。ありがとうございます。

 でもなあ。

 複雑な気持ちと喜びの半笑いを浮かべながら、誰もいない楽遊の庭に、私は水を撒き続けていた。

 4月の稼働率、実質0%。