文と写真・サラーム海上

 

■2019年冬の始まり、イスラエルにて

 ノルウェー・オスロから帰国して2週間後の2019年11月18日月曜、今度はイスラエルへと出かけた。以前から定期的に訪れていたイスラエルの音楽アーティストの見本市「International Showcase Music Festival」(以下「ISMF」)の4度目の取材が目的だ。


 午前中の成田空港からポーランド航空で10時間のフライトの後、午後3時のワルシャワに到着。2時間弱のトランジットの後、3時間半のフライトで、夜9時すぎにテルアビブのベン・グリオン国際空港に到着。乗り合いタクシーに乗り込み、夜の11時前にエルサレム南部にある友人フランソワーズ&アモス夫妻の家にたどり着いた。彼女たちにお土産を渡し、再会を祝して乾杯した後、午前1時前に就寝したが、またまた時差ボケのため19日の午前4時には目が覚めてしまった。

 

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エルサレムの友人宅の広いテラスから見た夜明けの空。今回も時差ボケに悩まされることに!
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エルサレム新市街の高台から旧市街の南側を東に眺める。中央を横切る壁はヨルダン川西岸地区とイスラエルを区切る壁……

 

 ISMFは翌日の20日からのスタートなので、この日一日は特に予定もなく、一人でストリートフードの食べ歩きをするつもりでいた。だが、スマホの通知を見ると、チャットアプリ上に作られたフェスの国際参加者専用グループに、プロデューサーのバラクから「本日、エルサレムに到着しているメンバーへ。僕が町を案内するので午前11時半に新市街の劇場ジェラール・ベハール・センター前に集まれ!」との誘いが届いていた。食いしん坊のバラクだからきっと美味いストリートフードを案内してくれるに違いない!


 午前10時前に家を出て、新市街のジェラール・ベハール・センター方面まで一時間ほどかけてゆっくり歩いた。11月中旬のエルサレムは冬の始まりだ。空はよく晴れていて、日差しも強いが、風はそこそこ冷たい。Tシャツに皮ジャンをはおり、首にマフラーを巻くくらいがちょうど良い。高級ホテルの並ぶ一角やオフィス街を通り、エルサレムの胃袋と言われるマハネイェフダ・マーケットをちらっと見渡してから、11時半に待ち合わせ場所のジェラール・ベハール・センターに到着した。するとニコニコ顔のバラクが、ニューヨークのリンカーンセンターの音楽ディレクターのジョルダーナと一緒に現れた。


「一日早くエルサレムに来てるのは君たち2人だけみたいだね。今日はマハネイェフダ・マーケットを案内しようかな」


 おお、それは嬉しい! 一人で買い物などせずにいて良かった!


 ジェラール・ベハール・センターから北に細い路地を一歩入ると、そこはイエメン系のユダヤ教超正統派の人々が暮らす地域だった。超正統派は19世紀の東ヨーロッパのユダヤ教徒の信心深い生活を、東ヨーロッパから遠く離れた中東のイスラエルでも行っていて、男性は黒いフロックコートに山高帽、もみあげを長く伸ばしている。女性たちはさすがに黒服ではないが、世俗派のイスラエル人と比べるとかなり地味な服装をしている。彼らは宗教者なので、宗教活動以外の労働は行わず、兵役などの国民の義務の幾つかが免除されているため、世俗派のイスラエル人との軋轢も根深い。