文と写真・下川裕治 

 

■宮古島の路線バス、9路線の制覇へ

 久米島の路線バスを乗り終え、宮古島に渡った。沖縄の離島は、その規模でふたつにわかれる。ひとつは宮古島と石垣島グループ。この2島は離島という言葉が似合わないほどの規模がある。そしてそれ以外の島々。宮古島と石垣島を離島というなら、離島の離島といった世界だ。

 路線バスも、宮古島と石垣島はそこそこの密度がある。といっても、1路線に運行するバスは、1日4、5便といったところなのだが。



 宮古島に渡る前、中田浩資カメラマンと時刻表を眺め続けていた。宮古島の路線バスは、新城吉野保良線、長北山北線、新里宮国線、池間一周線などのほか、伊良部島や下地島の空港をつなぐ路線など、9路線があった。どの路線に最初に乗り、2番目はどの路線……とできるだけ効率のいい乗りつぶし方を考えていたのだ。9路線といっても、その組み合わせは無数にあるような気になってくる。途中からなにがなんだかわからなくなる。

 最初に乗ったのは、宮古島の空港に停車する新里宮国線だった。空港ターミナル前のバス停から乗り込む。宮古島の路線バスは、終点を往復するのではなく、途中からぐるりと一周するルートが多かった。つまり、終点で降りるのではなく、ただ乗っているという乗車法になる。乗ってしまえば、なにも考えなくてもいい。

 バスは刈りとりを待つサトウキビ畑のなかをそこそこのスピードで進む。沖縄の離島らしい気持ちのいい道だ。昼間の時間帯。乗客は少ない。乗り込んだのは、僕らだけ。車内には、おじさんがひとり、ぽつねんと座っているだけだった。



 バスは南テカマ、ニカガリと沖縄らしい名前のバス停を通っていく。乗る人はいないから素通り。一時停車もしない。東ツンマーで若者がひとり乗ってきた。ベトナム人風の青年だった。離島の路線バスを利用するのは、高校生と老人が中心かと思っていた。しかしそこに、日本で働く外国人も加わってきたようだ。彼らの多くは、日本の運転免許をもっていない。といっても、ひとりだけだったが。

 

宮古空港前のバス停。宮古島のバス旅はここからはじまった

 

 バスは平良市内に戻ってきた。平良港結節地点というバス停で降りた。目の前が平良港である。

 宮古島には、バスターミナルがなかった。何回か乗り、この平良港結節地点をよく利用した。事実上のバスターミナルのようになっていた。

 次いで与那覇嘉手苅線に乗った。この路線は、栗間大橋を渡り、栗間島のなかを一周する。観光客がタクシーを使って訪ねるルートだ。そこをバスもまわる。栗間島は小さな島だから、車が走ることができる道……となると決まってきてしまう。バスは栗間島からいったん嘉手苅方面にそれ、一周して平良市街に戻っていった。バス運賃は920円。タクシーに乗らなくても、路線バスで栗間島観光ができてしまう。なんだか得をした気分だった。

 

栗間大橋を路線バスで渡る。渡りはじめから渡り終わるまでを

 

 その後、友利線を乗りつぶした。翌日は池間一周線に乗り、みやこ下地空港路線も乗った。この路線はふたつのバス会社が運行していた。この2社は伊良部大橋を渡った先で別の道を走る。行きと帰りでバス会社を変えた。これで乗りつぶすことができた。

 宮古島は沖縄の離島のなかでも規模が大きい。しかし離島だった。ぐるりと一周路線に乗っても1時間ほどで戻ってくる路線が多かった。思った以上に、離島の路線バスの乗りつぶし旅はさくさくと進む──。ここまで読んだ方はそう思うかもしれない。いや、僕自身、途中までそう思っていた。

 しかし宮古島の路線バスは、それほど甘くはなかった。

 それは、最初に乗った新里宮国線の車内で気づいてしまったことだった。

 この路線は、空港ターミナル前のバス停から、宮国方面に向かって進むのだが、途中にその路線から、ちょっとだけ、そう盲腸のような区間があった。その先にあるのが、野原公民館前というバス停だった。ちょうどバス停で一区間分である。僕らが乗ったバスは、野原公民館前の、その行き止まりの一区間には入らず、南ソバミネに向かってしまった。野原公民館前までの一区間が残ってしまったのだ。

 時刻表に視線を落とした。野原公民館前に停まるバスは1日に4本あった。

 この区間のためだけに、新里宮国線にもう一度乗らなくてはならない。考えたくはなかった。車内の天井を見あげた。窓枠の上には広告がはめられていた。

『国保税(料)みんなで納めてゆいまーる』

 またこの路線にもう一度乗らなくてはならない……。

 

みやこ下地島空港から宮古島に向かうバス。宮古島のバスのなかで唯一、乗客が多いバス
宮古島地図

(次回に続きます)

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