文と写真・室橋裕和

 

福生が熱い」
 そんな話が僕たち移民文化を愛する人々の間で語られるようになってきた。東京・福生市といえば、米軍の一大拠点・横田基地を擁する街である。誰しも「アメリカ文化に触れられそう」と思うのだが、我々の狙いはそちらではない。もちろん基地周辺に点在するアメリカンな店の数々も要チェック項目ではあるのだが、それ以上に気になるのは、この地域にベトナムネパールなどアジアの人々が増えているという点だった。

 

■拝島もプチネパールタウンとなっていた

 いったいどんな状況になっているのか、我々は西武新宿線で延々と東京を横断し、まずは拝島の駅へと降り立った。多摩の山々を望むのどかな住宅街という印象だが、北口を出るといきなりインド・バングラデシュ料理店がお出迎え。さらに近くにはネパール系のレストランがいくつも並んでいるのである。食材店もあったのでノゾいてみれば、やはりネパール人の経営で、なんと20年以上の歴史を持つ老舗であった。


「でも、いまはベトナムやアフリカの食材もたくさん置いてるよ」
 と言う通り、品ぞろえはなかなかインターナショナルだ。日本人の目につかない地方の小さな町でも、国際化は静かに進んでいるのである。近くにはモスクもあるらしいので、恐らくバングラデシュだと思うのだがイスラム教徒も暮らしているようだ。しかし、こちらは残念ながら発見できなかった。


 住宅街の中に入って、これまたネパール料理の「カルマ・レストラン」にお邪魔してみれば、注文したダルバートは絶品であった。ネパール料理を食べ歩いている我々の誰もが唸るおいしさで、これは「リトル・カトマンズ」の異名もある新大久保でも勝負できるのでないか。日本人の味覚に寄せたインド・ネパール料理ではなく、ガチのローカル・ネパール料理を出しているあたり、拝島のネパール人人口の多さを想像させる。しかし店の佇まいもまたローカルで、カトマンズの裏町っぽいそっけなさだから、マニアでもない日本人にとってはややハードルが高いかもしれない。

 

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拝島の「カルマ・レストラン」にて。いまや地方でも本格的なネパール料理が味わえるようになってきた

 

■「国境線」に沿って広がるアメリカンタウン

 拝島駅から北に歩くと、すぐに大通りにぶつかる。国道16号線だ。その東側にダーッと走る高いフェンス。あの向こうはアメリカなのだ。横田基地である。広大な面積を持つ横田基地の南西の角から、我々は北へと歩いていく。


 この16号沿いに、アメリカンなショップが立ち並んでいて、歩くのが楽しい。ダイナーやステーキハウスやカフェ、服屋ではミリタリーモノも売っていたり、アメリカ風の家具や雑貨、アンティークの店などが続く。もちろん米軍関係者やその家族らしき人々も行きかう。英語の通じる店や米ドルが使える店も多いそうだ。「ベースサイドストリート」と呼ぶらしい。

 こうした観光客も楽しめる店の合間に、教会がいくつもあったり、中古車売買や保険の会社が英語で看板を掲げていて、基地の人々の生活の様子もなんとなく伝わってくる。


 そして16号を挟んだ向こう側が、「別の国」だという事実。あちら側に僕たち日本人は自由に入れないし、違う法が支配する世界なんである。16号に沿って走るフェンスはいわば国境線なのだ。

日本の異国: 在日外国人の知られざる日常
日本の異国: 在日外国人の知られざる日常

もはや移民大国。2017年末で250万人を超えたという海外からの日本移住者。激変を続ける「日本の中の外国」の今を切りとる、異文化ルポ。竹ノ塚リトル・マニラ、ヤシオスタン、大和市いちょう団地、茗荷谷シーク寺院、東京ジャーミィ、西川口中国人コミュニティ、そして新大久保ほか。