写真・仲程長治 文・シマネコキネマ
「琉球島猫百景」というタイトルの本連載だが、もちろん「琉球島猫」という猫種は確認されていない。しかし、琉球という王国が栄えていた1700年代に、王府御用達の絵師によって描かれた「神猫図(しんびょうず)」という猫の絵が残されている。当時、猫は「神様からのお使い」と考えられていたようで、島猫が高貴な人たちに愛されていたことがうかがえる。
今でも首里城公園にはカミマヤァー(沖縄の言葉で「神猫」という意味)という公式のオリジナルキャラクターがいるし、首里のまちを散策すれば、神猫の末裔らしき?一族に出会うことができる。


「神猫図」に描かれている島猫は、シッポが黒い白猫だったりサビ猫だったりするのだが、少し毛足が長くてキリッとした表情が特徴だ。
時は流れて、現在の首里城公園周辺にいる猫たちはほとんどが「さくらねこ」だが、どの猫も人間たちに過度にこびることはなく、どこか高貴な雰囲気を漂わせている。門番をしながら観光客の撮影モデルもこなすシロキジ猫、城郭回りの神聖な杜に隠れ棲む白猫、首里城がライトアップされる宵闇時になると現れるシャム系猫など、それぞれに個性的でもある。


首里城公園を後にして周辺を散策してみると、薄れつつあるとはいえ、首里にはまだ「古都」の雰囲気が残っていることに気づかされる。赤瓦屋根の家、曲がり角の石敢當、花と緑に彩られた石塀……昔ながらの町並みは、どれも島猫によく似合う風景だ。
猫たちを驚かせないように、足音も立てずに静かにスージぐゎー(筋道)を進んでいくと、門扉の上に二匹の白猫が向き合ってシーサーのように鎮座していた。いつか撮影したいと願っていた夢のシチュエーション……! ゆっくりと近づいて数枚シャッターを切ると、現代の神猫たちは一目散に逃げて行った。



*本コラムの姉妹企画「琉球百景」は、沖縄発信の季刊誌『モモト』(編集工房 東洋企画)で好評連載中です。
*本連載は毎月22日(=ニャンニャンの日)に配信予定です。次回もお楽しみに!

ウチナーンチュ2世として大阪に生まれ、沖縄に移住して17年の著者が、猫とともに案内する那覇スージぐゎー。桜坂、栄町広場、ニューパラダイス通り、牧志、泊、天ぷら坂、壺屋通りなど、懐かしくて新鮮な路地裏を散策する。路地裏の島猫フォト〈写真:仲程長治〉&イラストマップ〈猫スポット付き!〉収録。
