栄中日文化センターでのオンライン講座「新しいソウルの歩き方」おさらい編の3回目は前回に続き、ドラマ『マイ・ディア・ミスター 私のおじさん』で、ヒロイン(IU)がハルモニと暮らす家があったタルトンネについて。

 

■タルトンネ(月の町)とは?

 タルトンネとは、朝鮮戦争のとき半島南部に避難してきた人たちや、休戦後、仕事を求めてソウルに来たが、平地には住まいを確保できなかった人たちが、市街から離れた山の斜面にバラック小屋を建てて住んだところだ。人一人通るのがやっとの路地。家賃や地価は安いが、交通の便は悪く、インフラの整備は著しく遅れていた。

 

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人気ドラマ『愛と野望』のタルトンネのセット(全羅南道順天市)

 

 この十年くらいで韓国各地のタルトンネが観光地として整備された。家や塀にカラフルなイラストが描かれたり、おしゃれなカフェができたりした。なかでも内外の観光客がもっとも多く訪れたのは釜山の甘川文化マウル(甘川2洞)だろう。また、全羅南道の順天には、2006年の人気ドラマ『愛と野望』の舞台だった60~70年代のタルトンネのセットがある。

 

■映画『パラサイト 半地下の家族』(2019年)

 2020年に米国アカデミー賞を独占した映画『パラサイト 半地下の家族』(ポン・ジュノ監督)で、タルトンネを知った人も多いだろう。主人公が住む半地下住宅がクローズアップされたが、あの家の周辺こそタルトンネだ。映画の冒頭、息子役のチェ・ウシクとその友人役のパク・ソジュンが焼酎を飲んだシュポは、2号線の忠正路駅と阿峴駅の中間辺りに実在する。

 桃を片手にシュポから出てきた妹役のパク・ソダムが進んだ方向に歩いて行くと、階段がいくつも続き、ここがタルトンネであることに気づくだろう。タルトンネはソウルの中心部から地下鉄でひと駅くらいのところにもあるのだ。

 

『パラサイト 半地下の家族』で、パク・ソジュンとチェ・ウシクがソジュを飲んだシュポ。映画にも緑色の車体が映っていたように、この前の通りを麻浦03番マウルバスが走っている
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シュポの脇の道を進み、階段をいくつか登ったところから後ろを振り返ると、こんな風景が

 

■ホン・サンス監督作品『ハハハ』(2010年)

 主人公(キム・サンギョン)が、母(ユン・ヨジョン)の住む統営を訪れたとき知り合った観光案内嬢(ムン・ソリ)が住んでいたのが、統営湾を見下ろすタルトンネ(トンピラン壁画マウル)だった。ここはソン・ジュンギとムン・チェウォン主演ドラマ『優しい男』(2012年)の舞台でもあり、10年ほど前から週末は観光客でにぎわっている。

 トンピラン壁画マウルは家々の屋根がカラフルにペイントされ、眺望もすばらしいので、内陸部にあるタルトンネのようなもの悲しさはあまり感じられない。釜山の甘川文化マウルに近い雰囲気なのだが、甘川文化マウルよりもずっと海が近く開放感があるので、タルトンネらしいタルトンネとはいえないかもしれない。

 

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中央の黄色い壁の家が『ハハハ』で観光案内嬢(ムン・ソリ)が住んでいた家(2012年撮影)。トンピラン壁画マウルは定期的に壁画が描き変えられるので、『ハハハ』の撮影時とは壁の色も絵も違っている
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観光案内嬢(ムン・ソリ)の家から統営湾を望む