文と写真・更科 登(TABILISTA編集長)

 

 2017年5月に脳血管の手術を受け、術後半年は禁酒生活を送ることになった。飲酒が解禁された後はあらゆる酒を嗜んでいるが、泥酔予防のために日本酒は自主的に遠ざけている。飲まない訳ではない。大量に飲酒しないように遠ざけているだけだ。


 ここ数年、旅先での密かな楽しみになっているのが、コップ酒探しだ。目的は容器そのもので、ラベルが貼ってあるものではなく、絵柄が直接コップに印刷されたものを求めている。洗えばコップとして普段使いできるし、旅の思い出にも浸れるのだ。

 きっかけは「隠岐誉」のコップ酒だった。隠岐の名物が描かれたイラストとデザインに一目惚れし、お土産として購入した。中身は定番の普通酒で、すっきりとした辛口で飲みやすかったのを覚えている。
 隠岐には「名水百選」に選定された湧水が2か所もある。仕込み水に恵まれ、古くから酒造りが行なわれてきたという。醸造元の隠岐酒造は、隠岐の酒造業を絶やさないために西郷酒造組合5社が企業合同して昭和47年に設立された。


 私はイカ好きの旅人で、イカこそがキングオブ酒の肴であり、美味しいイカと日本酒は切っても切れない間柄だと思っている。八代亜紀のあの歌を口ずさんでしまうほどイカが好きなのだ。そんなわけで10年ほど前にイカと酒を求めて島根県沖に浮かぶ隠岐諸島を訪ねた。隠岐は「古事記」「日本書紀」に「天之忍許呂別(あまおろしのころわけ)」と記され、中世には鳥羽、後醍醐両帝が配流された歴史の島である。島後島前の4つの島を巡り、不思議なパワーを感じる旅だった。中でも知夫利島で飲んだ純米吟醸は忘れられない。



 高級酒もいいが、コップで飲む定番酒も味わい深い。最近のお気に入りは、新潟端麗辛口「髙千代」と特別純米酒「飛騨久寿玉」のワンカップだ。日本酒を控えてはいるが、旅先で買ったお気に入りデザインのワンカップでチビリとやるのはやめられない。もちろん、肴は炙ったイカである。


「隠岐誉」(島根県 隠岐酒造)

コップ酒蒐集のきっかけとなった。絵柄は「しげさ踊り」(写真)のほか、隠岐名物「國賀海岸」「牛突き」もある。

 

「高千代」(新潟県 髙千代酒造)

日本昔話を彷彿させるほっこりとした絵柄に癒される。豪雪地帯である南魚沼の醸造元だけに雪国っぽい。


「飛騨久寿玉」(岐阜県 平瀬酒造)

飛騨地方に伝わるお守り人形「さるぼぼ」がモチーフ。少し細身のコップもカワイイ。原料米は岐阜県産ひだほまれ。