調査するにあたって、まずしなければならないのが、調査区を設定すること。遺跡の規模が大きくなればなるほど全体像が把握できなくなるため、掘る場所を区切って発掘の計画を立てるのだ。どうやるのかというと、調査する区域の地図上にグリッド(格子状の線)を引く。図面上の架空の線というわけではなく、実際に見える線にするために遺跡内の同じ位置に地図と同じように水糸を張り巡らせるのが一般的なやり方だ。ちなみに、これを「グリッド方式」と呼ぶ。現場では難しい言い方をすることもなく、「グリッド切っておいて」と調査員が作業員などに指示をする。

 いざ掘り始める時は、草などが生えているようないわゆる「地面の土」を除去して、遺構を見つけることができるところまでざっくりと掘り下げる。このとき取り去る地面のことを「表土」と呼ぶ。現場では「表土はぎ」とか「粗掘」と呼ぶことが多いが、大抵の場合は表土なんて呼ぶこともなく、調査員命令で「いいから掘れ」で終わってしまう。

 

 かつてはこの作業が体力的に厳しい代名詞のようだったが、昨今では作業効率重視で先ほど紹介した専門オペレーターがこのあたりを担うのだ。重機による掘削も行われる(もちろん予算次第だが)。羨ましい限りである。

 私が学生時代には、このときの作業のために様々なトレーニングを……別にしなかったが、若い奴が中心にローテーションして何メートルも掘り下げることなど、ざらにあった。使う道具は、エンピ(スコップ)やジョレン(クワのような道具)である。重機的なサポートなど一切なかったので、かなりきつい。それでも若さゆえだろうが、いざ掘り始めると自分が一番の掘り下げ上手に思われたい対抗心のようなものが生まれてくることもある。特に横並びで掘っている現場では、手より口のほうが動くやつも多かった。

「俺は剣道部だったから柄モノの扱いは得意だ」

 そんなことを言って強がる同期もいたが、長時間の掘削を続けるには体力と筋力のバランスが必要なだけで、得意も不得意もなかった。今になってみればだが、考古学とはまったく関係ないことで競っていたなと思う。

 

土に差さる掘削用の道具「エンピ」

 

 さて、この表土は、どこまで掘って、どこでストップするのかがポイントである。やり方はいろいろとあるが、結局は土の変化を見逃さないということに尽きる。

 見逃さずに観察するためには、宝探しのようにあちこち掘り起こす(これを「狸掘り」と呼ぶ)わけではない。同じ土の層だけの面を作り出す必要がある。そこで、全面を同じ高さに揃えてフラットにするのだ。色、密度(しまり)、含有物などなどを観察しながら、その土の中に遺構や遺物があるのかをチェックしていく。