文・写真/山本益博

 

わたしたち夫婦がこよなく愛する宿が、山形県南陽市の赤湯にある「山形座 瀧波」です。部屋がモダンで、なにより各室すべてにある露天の温泉の湯がよく、料理も「芋煮」など地方色を巧みに演出し、主菜は米沢牛のローストビーフで、なんとお替り付きというサービスがあります。もちろん、土鍋で炊いた山形米の御飯は申し分ありません。

 

その料理が評価されて、この5月のJALの国内線ファーストクラスの機内食に選ばれました。それを聞きつけた私たちが、「おめでとう!」を伝えに久しぶりに「瀧波」へ出かけました。そして、連泊中に、赤湯から仙台へ、翌日は赤湯のある南陽市から山形市へ食事に出かけました。車で出かけると、仙台まで1時間15分、山形へは30分ほどで着いてしまうので、あまりの近さにびっくりしました。

 

仙台で目指すは「George」というカウンター割烹の店です。料理の基本は和食ですが、クリームコロッケなどもある気のおけない割烹料理店と言えばよろしいでしょうか?
じつは、「George」のご主人大宮譲司さんとは、以前この「TABILISTA」号外の石巻篇で牡鹿半島へ出かけ、ジビエ料理をいただいたとき、調理の手伝いをしに仙台からいらして、挨拶だけ交わしました。その際「いつか、必ず仙台のお店に伺います」と言って、今回、ようやくその約束が果たせることになりました。
かぎ型のカウンター内には譲司さんひとり、刺身でもなんでもすべて手際よくやってのけます。「今日はもうかの星が入ってます」という。「もうかの星」とは鮫の心臓のことで、貴重な食材。どうやら、私たちのために用意してくださったようでした。それに、品書きには「ほや」の刺身がありました。
どちらも刺身でいただくことにして、「もうかの星」は、言ってみればレバ刺しにとても近い味と言えば、予想がつくでしょうか。ゴマ油の調味料で美味しくいただきました。

 

貴重な「もうかの星」

 

「ほや」はとてもくせのある味で敬遠する人が多いのですが、譲司さん曰く「鮮度が何よりで、産地でいただく以外、その味わいは堪能できません」とのこと。

 

新鮮なほや

 

ヨーロッパへいくと、貝類、牡蠣でもムール貝でも、ヨードの味が強い。ヨードとはあのヨードチンキのヨード。スコッチウィスキーのシングルモルト、中でも「ラフロイグ」を飲むと、ヨードがプンプンする。「George」には、シングルモルトがなかったため、ジンでいただきましたが、「ほや」と「ラフロイグ」なら、最高の相性ではなかろうかと想像できる味わいでした。

 

ほやの刺身

 

 

かつて、「食いしん坊万才!」の俳優渡辺文雄さんが、「ほや」について、こんなことをおっしゃってくれたことを思い出しました。
「三陸の海辺で、おばあちゃんがその場でほやをむいて食べさせてくれたとき、そのおばあちゃんが『ほやは涼しかろ』と言ったのね。ほやについて、これ以上の表現はないやね」
「George」では、仙台名物「牛たん」に焼き物、揚げ物など一通りのメニューを平らげて、店を後にしました。

 

牛たん
ご主人の大宮譲司さんと妻の美穂子と一緒に