「台湾ロス」のみなさんへ〈1〉

文・光瀬憲子

 

 『台湾一周!! 途中下車、美味しい旅』(双葉文庫)の読者さんから、「今は台湾に行けないが、行った気持ちになれる」という声をいただいている。台湾訪問がままならない状態なので、台湾ロス状態のみなさんに、さらに「行った気持ち」になっていただくため、本書の取材写真からお気に入りの数枚を時系列でピックアップしてみたい。

 

台南の路地裏、濃厚魯肉飯(台南) 

 

 台湾人のソウルフードといってもいい魯肉飯。写真は台南の小さな路地にある無名の食堂のもの。飾り気のない店だが、地元客がひっきりなしに訪れていた。豚バラを細かく切って醤油や香辛料でじっくり煮こんだ濃厚な魯肉の香りが旅人の足を止める。

 一緒に添えられているのは肉鬆(ローソン。コンビニと同じ名前で覚えやすい)という台湾では定番のふりかけ。肉でんぶだ。甘味が強いため子供に人気があり、ご飯嫌いの子もこれをかければ食が進む。

 かつて、中国本土に逃げた台湾の犯罪者が、魯肉飯を食べたくてたまらなくなって台湾に戻り、お縄頂戴というエピソードもある。台湾を訪れるとかならず食べたくなる鉄板グルメのひとつだ。

 

■見た目は「?」、味は「!」な牛肉湯(台南) 

 

 

 台南には國華街や保安路といったB級グルメストリートがあり、人気店が軒を連ねている。そして、台南では店ごとに扱うメニューが絞り込まれているという特徴がある。写真は牛肉湯(牛肉スープ)に特化した店だ。

 台南の食堂は営業時間が短く、朝食店は早朝から昼前まで、夕食店は夕方から深夜まで、など営業時間が細かく区切られていることが多い。何を、いつ食べたいのか? よく考えてお店選びをしなければならないので、台南で食べ歩きを楽しむには案外気を使う。



 写真は保安路の『阿村牛肉湯』。小さな店だが、座って食べている客、メニューを見て悩む客、テイクアウトを待つ客などで、人だかりがしている店先というのは美味しい証拠。

 

 

『阿村牛肉湯』の牛雑湯(牛モツスープ)。見た目にひるんではいけない。新鮮な牛肉を使っているので臭みはいっさいなく、それぞれの食感が楽しい。ぷるんとしたレバー、歯ざわりが独特のセンマイ、弾力のあるハチノスなど、「これ何だろう?」と考えながら食べるのも楽しみのひとつだ。

 牛、豚、鶏を問わず、モツは台湾人にとって貧しい時代を支えた大事な食材。そのため台湾人はモツの処理が実に上手で、臭みが抑えられている。日本でモツを敬遠している人も台湾ではぜひチャレンジしてほしい。