文・写真/佐藤美由紀

 

 真っ白な入道雲がわき立つ青空に、セミの鳴き声が喧しく響き渡るようになると、ある「つまみ」が恋しくなってくる。

 

青い空と入道雲が目に映り、セミの鳴き声が聞こえる時期になると、ビールが飲みたくなる。と言うより、ビールに最高に合う、私にとっての「夏のおつまみ」が食べたくなる。

私にとって、それは、夏の一時期にしか口にできない、とても贅沢な一品だ。

 

私の「期間限定」のおつまみは「トマトとキュウリをごま油で和えたの」。野菜をよく冷やしてもいいけれど、採れ立てをもらってすぐ、パパッと作って昼飲みのお供に。ビールに最適。思い切り辛いエスニック料理の箸休めにも。基本、ごま油としょう油のみの味付けだけど、鷹の爪を細い輪切りにして入れても、ピリッとして美味。

 

 広島県出身の私は、思うところあって、ここ数年、よほどのことがない限り、8月6日を広島で迎えるようにしている。平和記念公園で行われる式典に、一般市民として参列するためだ。
そして、その足で広島県東部に位置する福山市の実家に帰ってしばらく過ごす。これが、近年の私の夏の定番スタイルになっているのだが、その一品は、この機会にしか食べられない。

 

「あ〜、帰って来とるんじゃねぇ」

 

帰省して実家の庭先でチョロチョロしている私の姿を認めると、ご近所さんが声を掛けてくれて、早ければその日のうちに、遅くとも2、3日のうちには、夏野菜をどっさり届けてくれる。ご近所さんの何軒かは、家の前の小さな畑で自家用野菜を栽培していて、誰かが、そのお裾分けをしてくれるのだ。

 

「こんなもん、珍しゅうもないじゃろうけど」

 

ご近所さんは恐縮するけれど、いえいえ、私にとっては十分稀少。

さっき畑から採ってきたばかりの野菜なんて、東京暮らしでは、そうそう手に入るものではない。おまけに、オーガニックだの何だのと講釈を垂れたりはしないものの、「家で食べる分だけできればええんじゃけぇ、わざわざ薬を使わんでもえかろう」という肩の力が抜けた理由の、無農薬。そして、何よりうまい!

 

夏に帰省すると、実家のご近所さんが、自家用で栽培している野菜を届けてくれる。これら無農薬の野菜たちは、生で食べるのが一番! 生のピーマンも、ガブっとかじると、口いっぱいに甘味が広がって、「新鮮な野菜を食べている」という実感が! プチトマトは、ザルのまま抱え込んで、ポイポイと口に入れたくなるおいしさ。

 

というわけで、ご近所さんから届けられた野菜の中にトマトとキュウリがあると、私は、「トマトとキュウリをごま油で和えたの」をササッと作る。
包丁の腹でバンバン叩いたあと(本当は麺棒のようなもので叩くのがいいと思います、はい)、手で食べやすい大きさにちぎったキュウリと、適当な大きさに乱切りしたトマトを、パパッとごま油で和えてしょう油を適宜垂らせば出来上がり。

 

作り方は超簡単でアバウトだけれど、素材がいいだけに、美味しいこと、美味しいこと。

 

トマトは、甘いだけじゃなくて、ほどほどに酸味があるし、キュウリは、ちゃんと青臭ささがあるのだけれど、その中に甘味があって……。「いかにも野菜」、「昔ながらの野菜」の旨味が、香ばしいごま油に引き立てられて、箸が、ビールが、止まらなくなる一品だ。

 

これが自分で作った野菜だったら……。
こうしてみんな、「人生の楽園」的生活に行き着くのだろうか。
私は……。当分の間は、ご近所さんの野菜で、この「夏のおつまみ 」を堪能したいと思う。

 

「トマトとキュウリをごま油で和えたの」は、ビールでワイルドにいただくことが多いけれど、冷酒とも相性抜群。盛り付けは上品に、ごまなど振りかけて。故郷福山が誇る銘酒「天保一」の大吟醸を冷やでいただきま〜す。
「トマトとキュウリをごま油で和えたの」はアレンジいろいろ。小料理屋風にミョウガを添えることもある。ミョウガは実家の裏庭で採れたもの。ミョウガもまた、夏のおつまみ には欠かせない名脇役。
ごま油の代わりに山椒オイルで和えて、山椒の実をトッピングすれば、より小洒落たおつまみに。
実家の庭にある山椒の木から採った山椒の実を茹でてオリーブオイル漬けに。実と共に、刺身や冷奴にかけてもいいし、オリーブ系のパスタに使っても。大抵のものとの相性が良い万能オイル。いかにも「夏らしい」味に仕上げてくれる。
故郷の夏の味覚の一つが「ネブト」。瀬戸内海に生息する、数センチほどの小魚で、福山では夏のおつまみの定番。写真はたまたま徳島産だが、もちろん、福山でも水揚げされる。スーパーなどで普通に売られている。

ネブトは、頭を取って唐揚げにするのがポピュラー。下処理されたものも売られているので、帰省中、それが手に入れば、私も、こんなふうに作ってみたりする。

世界の著名人が伝えていた ヒロシマからの言葉
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世界でもっとも貧しい大統領 ホセ・ムヒカの言葉

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ホセ・ムヒカ前ウルグアイ大統領が、
2012年のリオ会議での感動的なスピーチを中心に「世界一貧しい大統領」として日本でもブームとなっています。
本書は、冒頭にそのスピーチ全文を掲載。
そして彼の他の演説やインタビューの中から名言をピックアップして、
ホセ・ムヒカ氏の人となりと思想、生き方をわかりやすく解説します。

信念の女、ルシア・トポランスキー ホセ・ムヒカ夫人 激動の人生
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“世界でもっとも貧しい大統領"ウルグアイ第40代大統領ホセ・ムヒカ。その妻は、国会議員のルシア・トポランスキー。ムヒカに寄り添い、いつも穏やかな微笑みを浮かべる彼女だが、かつてはゲリラ戦士だった。裕福な家庭の娘として育った美少女が、なぜ革命家になり、どう今に至るのか。信念の女性ールシアの波乱万丈な人生を追った一冊!

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