中世にタイムスリップできる旧市街

 朝の庭園散策を大満足のうちに終えた私達は、ランチまでの小一時間を利用して塔の向こうの古い集落を見に行くことにした。ヴィテルボ周辺の「トゥーシア」と呼ばれる地域は古代エトルリア人が支配していたという長い歴史を持っていて、このエリアには歴史の重みが感じられる古い小さな村がいくつも点在している。バニャイアもそうした村の一つで、中世時代にはイギリスのカンタベリーとローマを結ぶ巡礼路フランチジェナ街道の宿場町として多くの人々が行き交った。

 時計塔の脇にある小さなトンネルを抜けると、目の前には中世時代のままの風景が広がっていた。薄暗い小さなトンネルが劇的な効果をもたらし、現代から中世へと一瞬でタイムスリップしたような錯覚に襲われる。城壁で囲まれた旧市街には、この地域特有の「ぺぺリーノ」と呼ばれるグレーの火山砕屑岩で造られた建物がひしめき合っている。中心のカステッロ広場には城壁の建物と一体となったドゥカーレ宮殿、サンタ・マリア・デッラ・ポルタ教会、ボルゴ・デントロ(ボルゴの中の)噴水など、これまで見たことがなかったような興味深い建築があふれていて驚いた。迷路のような狭い道をあてもなく彷徨って行くと、突き当たりに古いフレスコ画が残る貴族の館が現れたり、かと思えば道端の家々の軒先にはカラフルなTシャツやジーンズが干してあったり。時代を超越した光景が次から次へと目に入り、自分がどの時代にいるのかわからなくなってくる。中世時代の街並みがそっくり残っている路地を歩きながら、ここが観光地ではく、現在も日常生活が営まれている住宅街であることを実感し、驚きはさらに大きくなった。

 

村の中心9月20日広場にある時計塔の右下に、中世への入口であるトンネルが見える(上)。トンネルを通り抜けた時計塔の裏側にある旧市街のカステッロ広場。おしゃべりに熱中するおばあちゃん達の衣装が違えば、本当にタイムスリップしたかと錯覚するだろう(中)。中世の住居の軒先にはためくジーンズとH&MのTシャツ。時代を超越した風景(下)。
路地の突き当たりで出くわした貴族の館パラッツォ・ガッロ。壁画は修復中らしく、若い修復師の女の子達が喧々諤々の議論を交わしていた(上)。誰かの家の入口かと思いきや、右手のドアはなんと古い教会(サント・ステファノ教会)の扉だった(下)。