ホテルもロープウェイも「接触回避」が常識

 トリノから今回最初のベースとなるモンテ・ローザの麓の村シャンポリュックまで、さらに3時間のバスの旅が続く。トリノから乗り継ぎの停留所があるヴェレスまでは中距離バスを利用。この中距離バスも当然乗車率50%が義務付けられていて、座席も全て指定だったので事前にチケットを購入しておいた。車内では運転手による検温とコロナウイルスに感染していないことを証明する自己宣誓書の提出があり、乗客全員のチェックが済んでからの出発となった。ヴェレスから乗り継いだバスはヴァッレ・ダオスタの州内を巡回するバスで、去年までは乗り込む際に運転手から切符を買っていたのが今年は全て無料となっていた。居合わせた地元民のシニョーラは、「コロナの補助金で私達の州ではバスを無料にしたのよ。運転手が乗客と接しなくて済むようになったし、利用者もタダで州内を移動できるようになったのはいいことよね」と教えてくれた。但し、乗車率50%はここでも適用されるため、来たバスが既に定員に達していた場合は乗車できない。幸い私達が待っていたバスは定員未満だったので乗ることができたが、一日数本しか運行しないバスに乗れるかどうか直前までわからないというのは旅行者にとっては厳しい賭けである。

 

全席予約指定の中距離バスでは、マスク着用だけでなく運転手による検温と署名りの「自己宣誓書」の提出も義務付けられていた。 

 ローマの自宅を出て10時間後、ようやくホテルにチェックインし、部屋に入ってやっとマスクを外すことができた。ホテル内のフロントやエレベーターはもちろんだが、部屋の中を見回すと、ここにも感染防止のための様々な注意書きが置かれていた。室内清掃に関しては、「お客様の私物には一切触れません」という断り書きがあったため、ベッドメイクとタオルの交換が素早く済むよう、衣類や私物はまとめてタンスにしまうようにしようと決めた。ホテルの朝食はブッフェだったがここでも対人接触を避けるため、ずらりと料理が並んだテーブルから2mの距離にテープが張られ、客は欲しい料理を指差してウエイターに取ってもらうシステムになっていた。ホテルの外に出ても、接触回避策は村のあらゆる場所で実施されていた。ロープウェイもその一つで、一つのワゴンに乗れるのは家族か少数の同行者のみ。さらにワゴン内も間隔を空けて座るようになっていた。こんな山奥にある小さなロープウェイの内部までソーシャルディスタンスが徹底されているとは正直予想していなかった。ヴァッレ・ダオスタ州は6月からずっと新規感染者ゼロが続いているが、これは単に州内の人口密度が低いというだけでなく、こうした日常的な対策と細かい配慮をそれぞれの住民が徹底して実践しているからなのではないかと考えさせられた。

 

ホテルの客室内も必要最低限の接触のみで清掃するシステムになっていた(上)。モンテ・ローザのロープウェイ乗り場。消毒ジェルが置かれたゲートで前のグループが乗り込むまで待機(中)。ロープウェイ内のシートも対人距離を取って座るようになっていた(下)