大変革を余儀なくされたレストランの新しいルール

 当初6月3日に予定されていた営業再開を大きく前倒しし、18日から営業再開が可能になったローマの飲食店だが、店内の対人距離の確保や消毒、客同士の感染を予防する設備など、州が定めた厳しい規定をクリアして18日に店を開けられたのは全体の60%に過ぎなかった。その多くはまだシャッターを開けられずにいる。運よく営業再開に漕ぎ着けた店も、10週間という予期せぬ長期休業のツケを埋めるために大車輪で働いている。観光名所の近く、つまり住宅街ではない場所にあるレストランやバールは店を開けても足を運んでくれる客の数が減少してしまったため、打撃はさらに深刻である。パンテオンの前にあるローマ料理の老舗レストランは、私が20年以上前から家族ぐるみで交流を続けている店なのだが、ロックダウンの期間中、彼らの店がどうなっているのか気が気でならなかった。シェフから「18日から店を開ける」という知らせを受けていてもたってもいられなくなり、陣中見舞いを兼ねてランチを食べに行くことにした。
 レストランのテーブルは完全予約制で、入れる人数は以前の半分ほどに限られる。彼らの元気な顔が見られるかちょっと不安な気持ちで予約時間に行ってみると、慣れ親しんだ店の入り口の床には目新しいシールが貼られ、ドアの横には消毒グッズ一式が置かれていた。
「チャオー‼︎」と元気な笑顔を見せてくれたシェフやスタッフとは、ハグとキスではなく、肘と肘を高く上げてぶつける新しいイタリア式挨拶でお互いの無事を喜びあった。店内を見回すと、テーブルは今までの倍以上の長さで対面距離が取られ、隣り合った席と席の間も2m以上の空間が設けられていた。席についてメニューを頼むと、ウェイターは「そこのQRコードをスマホで読み取ってくれ」と言いながら、テーブルに置かれた印刷物を指差した。「これ何?」と訊くと、「メニューだよ。今までのメニューはたくさんの人が手に取るから使えないんだ。だからお客さんがそれぞれ自分のスマホで読み取れるメニューを作ったんだ」とのことだった。なるほど、こんなところにも接触を避けるための工夫があるのかと感心した。それ以外にも、客はマスクや手袋など身につけたものをテーブルの上に置いてはいけない、客が立ったテーブルと椅子はその都度きれいに消毒するなど細かいルールがあるとのことだった。店内での客の行動についての責任は店にある。ちょっとしたルール違反で店が罰金や営業停止を喰らうことになっては大変なので、客の側にもそれ相応の責任ある対応が求められる。暑い厨房でマスクや手袋を付けたまま調理するのは大変だろうが、それでも彼らは店を開けられたことをとても喜んでいて内心ホッとした。

 

店の入り口に設けられた「ウェイティング・スポット」と消毒ジェルスタンド(上)。18日からの営業再開に伴い、レストランやバールはテーブルの間に2m、店内の人と人の間には1mの距離を確保することが条件付けられた。そのため小規模店の中にはまだ営業を再開できてない店も多い(中)。人が触れることを避けるため冊子メニューは使用不可、黒板などにメニューを書くことが推奨されている。QRコードで読み取るメニューを用意している店も多い(下)。